Research Abstract |
本研究では,透過性のナノ秒パルスまたは連続発振のレーザビームを材料表面または内部に集光することによって誘電体や半導体などの硬脆材料の精密微細加工を試み,加工メカニズムの解明,加工品質に関わるパラメータの究明と制御について,学術的な立場から検討し,産業界の要望に応えることを目的としている.本年度得られた主な成果は以下のとおりである. (1)ガラスのレーザスクライブにおける亀裂の局所進展レーザ照射を遮へいすることで亀裂が深く進展することを予測し,実験で亀裂が局所的に深くなる現象を確認した.遮へい幅とほぼ比例して亀裂深さは増加するが,遮へい幅が大きくなるとスクライブ方向の亀裂進行が停止する実験結果を三次元熱弾性解析により定性的に説明した. (2)ナノ秒レーザによる単結晶シリコンの内部改質層形成機構の解析吸収係数の温度依存性を考慮した熱伝導解析と,その結果に基づく簡単な熱応力解析によって,内部改質層の形成機構を検討した.その結果,吸収係数の温度依存性のため,集光点近傍で突如急激なレーザ光吸収が生じること,初期の急激なレーザ光吸収領域でボイドが生成し,その後熱衝撃波が表面方向に伝播すること,熱衝撃波先端の高温領域が強い圧縮応力を受け,熱衝撃波が通過した領域に高転位密度層が生成すること,前のパルスで生成した高転位密度層を熱衝撃波の先端が伝播する際,高転位密度層内の転位が核となって亀裂が生成し,単結晶領域まで進展することなどを示した. (3)透過性パルスレーザによる極薄シリコンウエハの内部改質50μm厚のSiウエハを対象とした熱伝導解析を行って,焦点深さによる加工結果の違いを予測し,実験でその妥当性を確認した.その結果,本解析によって加工結果を予測することができること,SD加工を行うには適切な焦点深さがあり,熱衝撃波が表面に達しない条件でレーザ照射を行う必要があることが明らかとなった.
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