2007 Fiscal Year Annual Research Report
電子スピン共鳴を用いたダングリングボンドとナノトライボロジー特性の研究
Project/Area Number |
19360075
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大前 伸夫 Kobe University, 工学研究科, 教授 (60029345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木之下 博 神戸大学, 工学研究科, 助教 (50362760)
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Keywords | ダングリングボンド / 電子スピン共鳴 / ナノトライボロジー / 表面損傷 |
Research Abstract |
未結合手(ダングリングボンド)を高精度で測定する唯一の手法は電子スピン共鳴法であるが、空気中で測定を行うと水蒸気や気体によって試料表面のダングリングボンドは終端されてしまう欠点がある。このことは、表面と界面に敏感であるトライボロジー現象にとっては致命的である。そこで、ターボ分子ポンプを主排気、スクロールポンプを補助排気とするオイルフリーな真空装置を設計・製作し、さらに真空槽内に往復摺動型のトライボメーターを取り付けた。到達真空度は10^<-5>Paを達成した。本年度はグラファイト板と軸受工具鋼との摩擦によって生成するダングリングボンドを検出することに成功した。また、ダングリングボンドのESR強度は摩擦の繰り返し数とともに増加し、この原因は表面欠陥の増加と綿密に関連することを明らかにした。同じ摩擦条件で大気中実験を行って検証したが、摩擦に伴うESR強度の増加は真空中の場合より小さいことから、真空雰囲気を作ることによって摩擦によるダングリングボンドを保存することに成功したと考えてよい。また真空摩擦ではESRの物性値であるg値の変化が著しかった。したがって、真空中の摩擦ではグラファイト構造の破壊によるダングリングボンドの増加が生じていることが判る。一方、大気中ではg値の変化が少なく、その原因はグラファイト表面の損傷が小さいのか、あるいはダングリングボンドが急速に終端されるかのいずれかであると考えられる。これはトライボロジーにおける新知見であり、真空ESRを開発することによってのみ得られた結果であると評価される。また、フラーレンC_<60>やカーボンオニオンからもダングリングボンドの存在と摩擦による強度上昇を明らかにすることができた。 このような成果をふまえ、Si(111)単結晶ならびにグラファイト(0001)面を試料としてダングリングボンドの検出と摩擦による強度変化に関する研究を行っている。
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