Research Abstract |
近年,Nd-Fe-B系ボンド磁石を利用した電気電子機器の用途が急速に広がっている。Nd-Fe-B系磁石は,従来のフェライト系やSm-Co系磁石に比べて高い最大エネルギー積を有し,機器の高性能化に寄与しているが,そのキュリー温度が低いため,高温に曝されると熱減磁が生じ,機器の特性の劣化を招く欠点もある。このため,Nd-Fe-B系磁石を用いた電気電子機器では,熱減磁の予測とそれを抑制するための設計技術の開発が極めて重要な技術課題となる。本研究では,電気電子機器の信頼性の確保の観点から,機器内の永久磁石の熱減磁法の開発を進め,平成20年度までに,複雑な磁化パターンを有する磁石の減磁を磁石の着磁過程まで考慮して予測する方法を開発した。 平成21年度においては,開発手法を12極の永久磁石モータに適用し,モータ内のNd-Fe-B系リング磁石の熱減磁を,その着磁過程を考慮して予測した。さらに,実機での熱減磁を測定して予測値と比較検討した。その結果,開発手法で (1) 多極着磁したリング磁石の減磁を定量的に予測できること (2) 着磁が不十分で十分な保磁力が発現していない箇所及び反磁界が大きい箇所で部分的に大きな減磁が生じる現象も予測できること 等が明らかになった。本研究で扱ったNd-Fe-B系リング状ボンド磁石(12極着磁)を120℃に暴露した際の平均表面減磁率の予測値が5.43%であったのに対して,減磁の実測値は5.73%となり,両者がおおよそ一致した。 このことは,開発予測法が,今後実機で使用される様々な形状,特性を有する磁石の熱減磁率予測に応用可能であり,電気電子機器等の信頼性向上に寄与することを示唆している。
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