Research Abstract |
平成21年度は,(1)植物根から放出される有機酸の同定,(2)廃石膏アパタイト(以下PHAと表記)を併用したファイトスタビリゼーションの機能評価,(3)水分移動場での植物・PHAによる重金属不溶化効果,(4)植物根からの土壌吸水機構,を考究した.(1),(2),(3)は15mLチューブに射撃場跡地の鉛汚染土壌を充填し,重金属集積能の高いそばを生育させ,根圏土壌とした.(4)は茎熱収支法により茎内流量を計測し,根吸水量と関連づけた.(1)の成果として,鉛汚染土壌で生育したそば根から放出される有機酸はシュウ酸であることをイオンクロマトグラフィーで同定し,根圏土壌のシュウ酸濃度はPHA添加量の増加とともに高くなり,栽培時間とともに減少することを明らかにした.(2)では,ファイトスタビリゼーションに最適なPHA添加率を,水抽出・逐次抽出試験結果に基づき探索し,根圏で4.4wt%以上,根域で2.8wt%以上のPHA添加量で原汚染土以上に鉛溶出量を抑制可能であることを明らかにした.(3)は,カラム下端における毛管上昇帯形成を回避するため,チューブ下端に負圧を与え水分移動場における鉛・アンチモンの流出破過曲線を計測し,鉛に対しPHA添加率4%(流出水pHは7.2),アスチモンに対しPHA添加率3%(流出水pHは6.7)が溶出抑制に対する最適添加率であることを明らかにした.(4)の成果として,蒸散のない夜間でも茎内流量が計測され,蒸散に基づく受動的根吸水に加え,根表面と植物体木部の水ポテンシャル差に基づく能動的根吸水機能が植物体に存在し,灌水量の少ない試験区が,夜間の能動的根吸水量は多くなる傾向にあることが判明した.(1)~(4)の成果に基づき,植物生理機能を考慮した根圏土壌における,水分と重金属の移流分散モデルを構築する準備が整った.
|