Research Abstract |
平成19年度には,荒川熊谷砂州および黒部川において,モデル作成のための現地データの取得を行った。木本類の観測においては,荒川砂州で優占している,ハリエンジュ,ヤナギ類,ネムノキについて形態および栄養塩の測定,土壌栄養塩の測定を行って,窒素が成長律速因子となっていることを明らかにした。また,これらの樹種のすべての個体の砂州上における分布を測定して,それぞれの樹種の生える場所の土壌特性および冠水頻度との関係の把握を行い,また,過去の洪水との関係を明らかにした。荒川では偶然9月に観測史上最大の台風に見舞われたことから,計画には含まれていなかったものの,洪水後に個々の樹木の状態を観測し,洪水前後の測定結果を比較することで樹木の流失の機構を明らかにした。これは,樹木の流失をモデル化する際に極めて重要な要素になるものである。 その結果,樹木の流失に対しては,従来いわれている,樹木にかかる抗力で抜けて流失するのではなく,砂州ごと流失することで樹木が流れていることが明らかになった。モデルに関しては,樹木個体の樹齢,形態測定の結果から,樹種ごとの形態に関するアロメトリー関係を求めた。さらに,それより樹木個体のアロメトリーを用いたモデルのプログラムを作成した。草本類に対しては,年間を通したツルヨシの組織ごとのバイオマス測定,および,また,黒部川の草本類と土壌の関係の測定結果から,粗粒土壌上と比較して,細粒土壌上で,特に葉茎の成長が促進されること,また,根に比して地下茎のバイオマスが増大すること等を明らかにして,草本類の成長と土壌との関係の把握を行った。また,草本の生長モデルを作成した。
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