Research Abstract |
本研究の第一の目的は,新経済地理学で発展してきた都市集積理論を,多数の都市・産業を扱いうる理論に一般化することである.Hl9年度の研究では,まず,Forslid & Ottaviano(2003),Pfluger(2004)の2都市・2産業CP(Core-Periphery)モデルをN都市・M産業モデル(N>2,M>2)に拡張した.そして,その均衡解の分岐パターンおよびメカニズムを解明するための方法(群論的分岐理論と数値分岐経路追跡の併用法)を開発した.解析の結果,多数の都市が円周上に位置するCPモデルでは,輸送・交通費用の変化に伴い,"空間的な周期倍分岐"に代表される多段階の対称性破壊分岐が起こることを明らかにした.また,消費者の財多様性に対する選好(を表わすパラメータ)の変化によっても同様の分岐現象が発生することを示し,これらの分岐パターンを包括的・系統的に分類した. 本研究の第二の目的は,都市集積モデルの複数均衡選択問題に対して,現実的な原理を導入した動学モデルを構築し,その理論的な特性を明らかにすることである.H19年度の研究では,まず,経済状態の不確実性(確率動学的なゆらぎ)を導入した動学モデルを構築した.そして,この確率的な状態変数の導入によって,確定的な従来モデルでは不定であった動的な均衡経路が,一意的に決定されることを証明した.また,状態変数のゆらぎにともなう均衡状態の確率分布は,定常状態に収束することを示した.これらの結果から,従来研究(Krugman等)によって主張されていた「消費者集団の期待によって,複数の均衡解間での逆転的推移が生じる("expectation matters")」といった現象は,ほぼ起こりえない(確率論的に無視できる)ことを明らかにした.
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