Research Abstract |
本研究は,環境中の化学物質について,水系での挙動の解明を明らかにするもので,本年度の成果は,底質系,ナノろ過系,吸着処理系に主として分類できる。底質系においては,全国の港湾域での多数の底質に対して,ダイオキシン類,多環芳香族炭化水素類を中心とした疎水性有機化合物に着目し,log Kowとlog Kocとの間の関係を検討し,わが国の法律規制で主流の溶出量規制と,国際的に用いられる含有量の関係を求めた。その結果,従来から知られている関係式によって,泥の強熱減量あるいは有機物含有量が知られれば,溶質試験値と含有量との関係を表現できたが,一方で,泥試料によっては,溶出量試験の定量限界以下のデータの扱いが問題となることが明らかになった。ナノろ過系では,逆浸透膜,ナノろ過膜の医薬品類の阻止特性を検討し,サイズふるい効果以外に,分子のイオンへの解離が阻止率に大きく影響し,イオン状態の医薬品の方が阻止率が大幅に大きくなることを示した。また,阻止率の長期安定性についての検討をおこなった結果,逆浸透膜が膜洗浄薬によって劣化する場合には,サイズふるい効果と荷電効果の両方が劣化することが明らかになった。吸着処理系においては,医薬品の粒状活性炭処理での除去効果を調べた。浄水場で2年以上用いられ,吸着がかなり飽和していると考えられる活性炭を用いても,90%程度除去される医薬品が多く,また,活性炭層の逆洗浄などで,活性炭の位置関係が変わると,新たな吸着面がアクティブになり,除去率が一時的に向上することが明らかになった。以上から,浄水場で現在用いられている高度処理技術は,現在の運転条件でも微量の親水性有機化合物対策としても有効であるという結論を得た。
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