Research Abstract |
本研究の目的は,最近開発された多くの熱電材料の設計指針となってきたPhonon Glass Electron Crystalとは本質的に異なる設計指針(Weakly Bonded Rigid Heavy Clusters,WBRHC)を提案し,その有効性を実証し,新しい設計指針を確立しようとするものである。 本年度は,上記の設計指針の有効性を実証するため,すでに進行中だったAlPdRe準結晶への他元素置換の研究を進めた。まず,アーク溶解と熱処理で作製した試料に,熱電特性の異方性があることを見出し,熱電特性の高い方位を明らかにした。試料の底面に平行方向より垂直方向の方が,熱伝導率は1.6倍に対して電気伝導率は2.3倍でるため,性能指数は1.4倍大きい。また,試料を一度粉末にし,放電プラズマ焼結により焼結体とすることにより性能を向上させた。焼結後のかさ密度を90%程度にして空隙を少し導入することにより,熱伝導率をより効果的に低下させることができ,性能指数を約3倍にすることに成功した。 次に,これらの試料に,WBRHCの設計指針により,クラスター間の結合を弱めるために,ReのFe置換およびAlのGa置換を行い,熱電性能の向上に成功した。MEM/Reitveld法による電子密度分布測定により,周期表で,遷移金属では上に行くほど,典型金属では下に行くほど,共有結合性が弱くなると考えられる。無次元性能指数ZTの最大値は,Fe置換により500Kで2.6倍向上し0.21に,Ga置換により700Kで2倍向上し0.19になった。
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