2008 Fiscal Year Annual Research Report
フラーレン-遷移金属ハイブリッド材料のスピン輸送機能デザイン
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19360290
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
境 誠司 Japan Atomic Energy Agency, 先端基礎研究センター, 副主任研究員 (10354929)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 吉弘 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 博士研究員 (80455287)
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Keywords | フラーレン / 遷移金属 / 有機分子 / スピントロニクス / トンネル磁気抵抗効果 / 磁気抵抗効果 / トンネル効果 / スピン注入 |
Research Abstract |
本年度の研究成果について、申請者らが発見したグラニュラー状態のC_<60>-Co薄膜の低温での巨大(トンネル磁気抵抗)TMR効果のメカニズムについて、C_<60>-Co薄膜の電子・スピン状態に関する分光実験を行い、極めて重要な知見を得ることができた。以下に、概要を記す。 グラニュラーC_<60>-Co薄膜及びC_<60>-Co化合物薄膜の放射光X線磁気円二色性(XMCD)分光の実験を行った。XMCD分光では、照射X線の波長を特定の吸収端の領域に調整することにより、特定の原子(Co,C)が関与するフェルミレベル近傍の電子構造やスピン状態(スピン・軌道磁気モーメント)、スピンの磁気的応答を知ることができる。同実験の結果、C_<60>-Co化合物中に常磁性的に振る舞うCo 3d軌道が関与する局在スピン(局在dスピン,スピン/軌道磁気モーメント=0.5/0μ_B)が存在することが明らかになった。さらに、同スピンの磁気的応答の温度依存性とグラニュラー薄膜のTMR効果に明確な相関が見いだされた。理論モデルを踏まえた検討の結果、巨大TMR効果の要因として下記の描像が得られた。 グラニュラーC_<60>-Co薄膜中のCoナノ粒子とC_<60>-Co化合物の界面において、伝導に関与する電子のスピン偏極状態が化合物中の局在dスピンとの相互作用により変調され(界面スピン変調作用)、局在dスピンの熱揺らぎが抑制される低温では、完全スピン偏極に近い状態でスピン依存トンネリングが生じ、巨大TMR効果が生じる。一方、約10K以上では、局在d-スピンの熱揺らぎが顕著になるため、界面スピン変調効果はスピン偏極率を下げる方向に働き、TMR効果の大きさは著しく減少する。 その他、上記効果と複合的に作用するナノ構造由来の増長機構の関与についても知見を得ている。これらを総合して、次年度中に巨大TMR効果のメカニズムの全貌を解明する。
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