2009 Fiscal Year Annual Research Report
固体化学的手法による実用超伝導体の臨界温度上限の探究
Project/Area Number |
19360293
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下山 淳一 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 准教授 (20251366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸尾 光二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (50143392)
荻野 拓 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (70359545)
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Keywords | 超伝導体 / 臨界温度 / 精密化学組成 / 臨界電流特性 / ドーピング |
Research Abstract |
本研究では、実用超伝導体の臨界温度の上昇を通じて、臨界電流特性をはじめとする様々な材料特性を飛躍的に向上させることを目指している。実用超伝導体の多くは化学組成が理想組成からずれていることから、臨界温度上昇の余地が大きく、固体化学的な手法で理想組成に近付けることを進める。対象とする物質は銅酸化物超伝導体である希土類123系とBi系2223相、Bi系2212相、および二ホウ化マグネシウムである。21年度の研究成果の概要を以下に記す。 希土類123系では物質自体の臨界温度の上昇には成功しなかったが、前年度に見出していたY123の金属組成不定比性について、Y過剰組成では臨界温度だけでなく、低温域まで含めて臨界電流密度が桁違いに低下することを発見した。さらに、この知見を有機酸塩塗布熱分解法によるY123薄膜作製に生かし、臨界温度93Kを再現性良く実現する方法を見出した。これまでY123薄膜は長尺実用線材や通信フィルタとして世界中で活発に開発が行われてきたが、臨界温度は89~91Kでしかなく、本成果はこれを大きく上回るものである。また、臨界電流特性についても再現性良く高いことを確認した。 Bi系2223相については、前年度までに単芯線材を用いた研究から得た知見を、実用的な多芯銀シース線材を中心に展開し、不純物相が生成しない条件での臨界温度向上を図った。仕込金属組成比をほぼ定比(2:2:2:3)とした多芯線材において、焼成を300気圧下で行い組織を緻密にした後、775℃、725℃の2段階還元アニールを行うことによって、磁化における超伝導転移の中点を113Kに上昇させることに成功した。この値は従来製品よりも2K高く、材料としての新記録である。さらにBi2212単結晶においても定比金属組成に近付けることによる臨界温度の上昇および電子線照射のピン止め力向上効果が著しく高くなることを発見した。 一方、二ホウ化マグネシウムの臨界温度については顕著な成果は無かったが、物質本来の臨界温度を低下させない方法で高密度かつ高度c軸配向バルクの開発に初めて成功し、記録的に高い臨界電流密度を実現した。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Cation Nonstoichiometry of Y1232009
Author(s)
J.Shimoyama. H.Kaku, H.Ogino, S.Horii, K.Kishio
Organizer
9th International Conference on Materials and Mechanisms of Superconductivity
Place of Presentation
東京、新宿 京王プラザホテル
Year and Date
2009-09-08