2007 Fiscal Year Annual Research Report
結晶構造の歪み制御によるマルチフェロイック酸化物薄膜の創製と物性評価
Project/Area Number |
19360297
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坂本 渉 Nagoya University, エコトピア科学研究所, 准教授 (50273264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
余語 利信 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 教授 (00135310)
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Keywords | 化学溶液プロセス / 薄膜 / 強誘電性 / ペロブスカイト構造 / 固溶体系 / 絶縁性 / モルフォトロピック相境界 / アクセプタ元素 |
Research Abstract |
本年度は、BiFeO_3-PbTiO_3系化合物が巨大物性発現の可能性のあるモルフォトロピック相境界組成を有することに着目し、化学溶液プロセスを用いてBiFeO_3-PbTiO_3系化合物薄膜を合成した。ここでは、BiFeO_3-PbTiO_3系薄膜作製用前駆体溶液の調製、前駆体の熱分解および結晶化挙動の追跡、Siベースの基板上への薄膜作製とその電気的特性の評価を中心に検討した。その結果、適切な調製条件を選択することにより均一かつ安定なBiFeO_3-PbTiO_3系前駆体溶液が調製でき、基板としてPt/TiO_x/SiO_2/Siを用い、PbTiO_3固溶量を適切に制御する(20mol%以上)ことで、これまでの研究よりも目的相であるペロブスカイト相単相の薄膜を得るプロセスウィンドウを大幅に広くすることが可能となった。一方で、BiFeO_3-PbTiO_3組成中のPbTiO_3割合を変化させた前駆体粉末試料における結晶化処理後の結晶系および磁気的特性の変化も明らかにした。このような結果をもとに、Si系基板上に作製した薄膜の電気的特性に対するPbTiO_3固溶量の効果について調べたところ、PbTiO_3固溶量の変化とともに強誘電性が変化し、現時点では30mol%の固溶(モルフォトロピック相境界組成付近)が、試料の絶縁性が高くなる低温域ではあるものの、非常に優れた強誘電性を発現することがわかった。しかし、実際のデバイス応用を想定した際に重要になる絶縁特性は十分ではなく、さらに、アクセプタ元素であるMnのドープを行った場合ところ、室温域でも優れた強誘電性を示し、走査型プローブ顕微鏡を用いた圧電性の評価も可能となった。以上、本研究によりBiFeO_3-PbTiO_3造中への30mol%のPbTi_3の固溶およびMnドープが良好な強誘電性を有する薄膜の作製に非常に有効であることを見いだした。
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