Research Abstract |
(1)酸化チタンナノ・マイクロロッド配列構造およびマイクロドメイン起伏構造の創製 (1)自己組織化的酸化チタンロッド配列構造の創製,細胞接着性および増殖性の評価 大気中雰囲気下で400〜600℃で1時間から24時間の熱処理を施した金属チタンの表面に金属結晶粒(グレイン)の大きさを反映したマイクロドメイン起伏構造を創製した。熱処理温度と熱処理時間を変化させて,X線回折法により酸化チタン(ルチル相)の結晶子径の変化を調べ,600℃の条件が結晶径の制御に最適な温度であることがわかった。酸化チタンの結晶子径の大きさと平均表面粗さは比例関係になったことに基づき,平均表面粗さ;Raを15〜70nmの範囲内で調節した。このことは,熱酸化という簡単な処理方法により,ナノメータースケールの表面粗さの制御ができることを示す。その起伏構造を有する所定の表面粗さを有する基板表面で骨芽細胞様細胞の培養実験を実施して,細胞接着性と増殖性を調べた。その結果,平均表面粗さが40nm(Ra)付近で優れた細胞増殖性と増殖性の発現を確認した。 (2)ガラスからの水酸アパタイトロッド配列構造の創製 CaOとNa_2O比の異なるソーダライムシリカ系ガラスを作製し,pH9付近の0,01Mのリン酸塩水溶液に80℃の条件で最大28日間浸漬した。浸漬後のガラスを蒸留水で洗浄,自然乾燥し,ガラス試片の微細構造をX線回折法で評価し,走査型電子顕微鏡(SEM)により表面及び断面の形態を観察した。リン酸塩水溶液のイオン濃度変化を高周波誘導結合型プラズマ発光分光法で調べ,リン酸塩水溶液のpH変化を調べた。pH及び元素濃度変化に基づき、アパタイトロッド配列構造の形成機構を次のように考察した。ソーダライムシリカ系ガラスはリン酸塩水溶液中で加水分解反応して,Na(I)イオン,Ca(II)イオンを溶出する。豊富なシラノール基で構成される水和シリカゲル層は水酸化物イオンによるSi-O-Si結合の切断を受け,水和シリカゲル層は分解して,Si(IV)イオンが溶出する。ガラスとリン酸水溶液界面でのCa(II)とOH-濃度の増加は近傍のP(V)と反応してアパタイト形成に有利に働くため,アパタイトが形成する。 (2)ナノ結晶性酸化チタン層への酸化物層の創製およびMgイオン,Caイオンの導入および細胞適合性の向上 (1)金属チタン基板を3mass%の過酸化水素水溶液に浸漬して,80℃で3時間処理し,表面にサブミクロンスケールの酸化チタン結晶(アナターゼ相)を析出させてた後,Ca(OH)_2水溶液またはCa(OH)_2/Mg(NO_3)_2水溶液中で150°C,24時間水熱処理した。作製した試片の表面構造を薄膜X線回折法,表面形態を走査型電子顕微鏡観察,表面化学組成をエネルギー分散型X線分析により調べた。また,作製した試片を36.5°C,pH7.4のSBFに3,7,および14日間浸漬し,in vitroアパタイト形成能をTF-XRDおよびSEM観察により調べた。水熱処理に用いるCa(OH)_2水溶液中のMgの有無により,金属チタン板表面に結晶構造および形態の異なる修飾層が形成した。また,得られた修飾層はin vitroアパタイト形成能を有しており,その形成能は水和結晶相が形成したCT_10Ca/8Mg試片の方が高いことが分かった。骨芽細胞様細胞を用いたin vitro細胞増殖性評価を行った。ポジティブコントロール(プラスティック)と比較して,CT_10CaおよびCT-10Ca/8Mg試片の増殖性に変化は見られないことから,CT_10aおよびCT_10Ca/8Mg試片に細胞毒性がないことが分かった。
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