Research Abstract |
アスベストの人体への有害性が発覚し,それに変わる代替品が議論されてきた.その中で,膨張黒鉛は,耐薬品性,圧縮性,安全性,コスト等からから建材,石綿パッキン,シールおよびパッキン材として極めて重要な位置づけになっていることが報告されている.従って,今後,その需要は増し,膨張黒鉛の生産量も大幅に増加していくものと考える.これまで50μm以下の粒径の黒鉛フレークは膨張化が難しいとされており,使用されず,破棄されていた.しかしながら,需要増加に対応させるため,50μm以下の微粒子黒鉛の膨張化に対応する必要がある.平成19年度は,50μm以下の天然黒鉛微粒子の膨張化の可能性を検討した.その結果,硫酸,硝酸を使用する化学溶液法による黒鉛層間化合物の合成と,それからの膨張化は困難であるものの,微粒子黒鉛を陽極に固定し,硝酸電解質中で陽極酸化を試みたところ,酸化黒鉛が合成され,それを1000℃にて急速加熱することにより,15μm,あるいは10μmの微粒子黒鉛からの膨張黒鉛の作製に成功した.3μmの微粒子でも,電気化学処理,すなわち陽極酸化時の電流密度を上げ,さらにチャージ量を多くすることにより,熱処理膨張化には至るが,微粒子全てを均一に膨張化させるためには,粒子それぞれを完全に酸化する必要があり,電気化学処理手法の工夫が必要であること明らかになった.この他,数μmサイズの微小炭素繊維の三元系層間化合物[K-THF(Tetrahydrofuran)-CF(Carbon Fibers), Na-DMF(Dimethylformamide)-CF, Li-DMF-CF]の合成に成功し,それの熱処理による膨張化に成功した.黒鉛フレークへの適用に繋がる.
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