2009 Fiscal Year Annual Research Report
溶融塩-シリコン交換反応によるβ-鉄シリサイド半導体創製の物理化学
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19360342
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 一樹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00210170)
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Keywords | β-FeSi_2 / 環境半導体 / 溶融塩 / 陽イオン交換反応 |
Research Abstract |
平成21年度は、前年度までと同様のNaCl-KCl-FeCl2系溶融塩を用いて、β-FeSi_2(s)薄膜の最適創製条件をさらに明確化し、引き続き、創製条件と光学特性との関係を調査するとともに、β-FeSi_2に第3元素(不純物)をドープすることにより、β-FeSi_2の結晶性、バンドギャップ、電気伝導度などの物性の制御を試みた。特に、Feと同じ強磁性を示すCOは、シリサイドを形成するなどFeと同じような性質を示すことから、β-FeSi_2へのドープ元素としてCoを選んだ。 まず、NaCl-KCl-FeCl_2-CoCl_2系溶融塩を用い、シリコン基板との交換反応による鉄シリサイド薄膜の形成を試み、以下の知見を得た。 初期塩化物中のCoCl_2濃度が反応層に及ぼす影響を調べたところ、溶融塩中のCoCl_2濃度の増加にともない、FeSi_2層中のCoのドープ量が増加した。また、それに伴って、β-FeSi_2の安定温度が低下し、1173Kにおいてはα-FeSi_2が確認された。 また、CoCl_2濃度が0%で作製したβ-FeSi_2の電気抵抗率は、低温では文献値と非常に良く一致したが、CoCl_2濃度が0%の試料に比べCoCl_2を添加した試料では電気抵抗率が大きく減少した。これは、Coがβ-FeSi_2にドープされることによりβ-FeSi_2層中のキャリア密度が増加したためと推察される。一方、CoCl_2濃度の増加にしたがい、透過率が低下した。これは、前述と同様にFeSi_2層中のキャリア密度が増加し、電磁波が吸収されたためと考えられる。 CoCl_2濃度0、0.005mol%の試料の透過率から、それぞれの光学バンドギャップの値は0.75eV、0.71eVであった。しかし、β-FeSi_2のバンドギャップは格子歪みに対して敏感に変化することが知られているので、溶融塩からの不純物の混入やβ-FeSi_2の結晶性などの影響については検討の余地が残されている。 以上のように、本法により得られたβ-FeSi_2薄膜の特性が示され、Coドープにおいても、β-FeSi_2相の析出を抑制しβ-FeSi_2を析出させるための作製条件の指針が明らかになった。
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Research Products
(2 results)