2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19360349
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
火原 彰秀 The University of Tokyo, 生産技術研究所, 准教授 (30312995)
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Keywords | ナノ・マイクロ科学 / マイクロ化学チップ / ナノ流体 / マイクロ流体 / 気液二相流 / 蒸発 / 凝縮 |
Research Abstract |
本年度は、マイクロ流路内を並行して流れる二相(気液および液液)間に働く毛管力を定量的に評価するための物理モデルを実験的に検証した。二相間には粘度差が存在するため、モデルでは、並行して流れる二相に、それぞれ別々の圧力損失を考え、平行二相流の上流と下流では二相間に異なる圧力差が存在すると考える。この圧力差を二相界面の変形によって生じるラプラス圧が補償する。このとき、二流体間と壁面の三相接触線がとりうる接触角は、前進接触角から後退接触角までであるとした。様々な表面張力と接触角をもつ溶媒について実験を行い、モデルが広い範囲で適用可能であることを確かめた。気液混在マイクロ化学プロセスを設計する上で重要な知見が得られたといえる。 ナノピラー内での毛管凝縮現象の解析では、異なる大きさと空隙サイズをもつナノピラーを一枚のチップに集積化したチップ作製に取り組んだ。また、蒸気圧を正確に制御することを目的に、チップ外で飽和蒸気をつくり、キャピラリーを介して蒸気を導入するシステムを組み上げた。このシステムでは、飽和蒸気を導入し、ナノピラーで蒸気が凝縮しはじめる温度を正確に計測できるため、毛管凝縮現象の平行論を議論するのに適したシステムであるといえる。一方、このシステムでは蒸気発生部から凝縮部までの距離が離れており、凝縮が始まった後も、凝縮液の成長がゆっくりとしか進まないという現象を観測した。蒸気発生部と凝縮部が離れていると、凝縮速度がキャピラリー内の流速に支配されるためと考えた。そこで速度論解析のためには、蒸気発生部と凝縮部が十分接近している必要があると考え、液体流路とナノピラー部(凝縮部)が数mm程度に接近したチップを作製した。この距離では、観測する凝縮現象の時間スケールに対して、気相中溶媒分子の拡散時間は無視できるほど小さいと考えられる。このチップを用いて、毛管凝縮現象を観測に成功した。凝縮率評価方法の確立などに課題は残っているが、本研究の目的の1つである、毛管凝縮現象の速度論解析につながる重要な成果であるといえる。
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Research Products
(9 results)