2007 Fiscal Year Annual Research Report
ソフトナノコロイドの超精密分離におけるメカニズムの解明
Project/Area Number |
19360351
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
入谷 英司 Nagoya University, 大学院・工学研究科, 教授 (60144119)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 康人 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (30303663)
片桐 誠之 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教 (00345919)
|
Keywords | ソフトナノコロイド / 膜濾過 / 超遠心分離 / 圧密 / 流動比抵抗 / 空隙率 / タンパク質 / エマルション |
Research Abstract |
本研究では、種々のソフトナノコロイドを対象とした一連の粒子・流体系分離の複雑なメカニズムを解明することにより、最適な分離手法、装置や操作の設計のための基礎的な知見を得ることを目標とする。本年度は、ソフトナノコロイドの超遠心分離、ソフトコロイドとハードコロイドの混合系の膜濾過、ゲル状物質の圧搾などについて検討をおこなった。 ソフトナノコロイドの分離挙動を把握するために、代表的なタンパク質である牛血清アルブミン(BSA)の水溶液を試料として用い、超遠心沈降試験を行い、沈降と濾過(透過)のアナロジーを利用してBSA圧密層の透過特性を求め、その妥当性を検証した。これまでBSA圧密層の透過特性を支配する要因となるBSA高分子の比表面積の評価が困難であったが、超遠心沈降試験データにHappelのセルモデルに基づく解析を適用することにより評価可能なことを示した。試料濃度が大きくなるとBSA高分子同士が接触・変形し、比表面積が大きくなり、その結果、流動比抵抗が大きくなることを明らかにした。 油、微粒子、ナノコロイドの乳化剤を混合したエマルションスラリーの定圧での膜濾過について検討を行った。濾過と続いて生じる圧密の機構で分離が進行し、下層に微粒子層、上層に空隙率が0に近いゲルエマルション層が形成され、微粒子、油滴、連続層の分離が容易に可能なことを見出した。濾過過程は、Ruthの定圧濾過速度式、圧密過程は、定圧圧密速度式で記述できた。また、圧密終了後もケーク層に圧力を作用し続けることによって上層の油滴が下層の平均孔径約70nmの微粒子層を透過し、油滴の凝集・合一が生じることを明らかにした。この現象の解明には、操作圧力、油滴の大きさ、油滴と乳化剤との相互作用等の影響を詳細に検討する必要があり、今後の課題となる。 ソフトマテリアルの一つであるゲルは、ナノサイズの網目からなる三次元網目構造を有しており、ゲルの変形に伴う網目サイズの変化がその脱水挙動に大きく影響するものと考えられるが、ゲル状物質の脱水特性については現在のところ十分な知見が得られていない。本研究では、ゲル状物質の例として豆腐の定圧圧搾実験を行い、圧密脱水モデルを提案するとともに、その妥当性について検証した。豆腐の圧密過程では、一次圧密のみを考えたTerzaghiモデル、二次圧密も考慮したTerzaghi-Voigtモデルによる従来の圧密解析法では、いずれも実験結果を良好に表現できないことがわかった。そこで、TerzaghiモデルにVoigtモデルを複数個直列に接続したTerzaghi-一般化Voigtモデルを圧密解析に適用し、このモデルにより圧密過程の記述が可能なことを明らかにし、多段階にクリープ現象が生じる多段クリープを考える必要があることを示した。
|