2009 Fiscal Year Annual Research Report
シロアリ類のカスト分化を制御する遺伝的・生態的要因の解析
Project/Area Number |
19370009
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
北出 理 Ibaraki University, 理学部, 准教授 (80302321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 清人 富山大学, 理工学研究部, 准教授 (20345557)
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Keywords | 社会性昆虫 / カスト決定 / カスト決定遺伝子 / ワーカー / フェロモン |
Research Abstract |
1.「ニンフ・ワーカー」分化における遺伝的決定(GCD)モデルを検証するため、オーストラリアで採集・輸入したP.queenslandicusを用い、(1)有翅生殖虫♀×♂、(2)♀ワーカー型生殖虫×♂ニンフ型生殖虫、の2タイプの交配実験を行ったが、幼虫は全て♀ワーカーに分化し、GCDは検出されなかった。ヤエヤマシロアリでも交配実験を進め、ヤマトシロアリと同じモデルに従うGCDを確認した。またムカシシロアリの有翅虫の交配で得られた初期巣から幼形生殖虫を分化させることに成功し、交配実験を進行している。 2.遺伝マーカーを用いてコロニーの繁殖構造を探るため、西表島でR.yaeyamanus野外巣のカスト組成調査とマイクロサテライト(MS)分析を行った。ワーカー型を含む多数の幼形生殖虫による有性生殖と近親交配が示された。 3.ヤマトシロアリのカスト分化に及ぼす環境・遺伝子の相互作用を解析するため、(1)ヤマトシロアリの初期コロニーから王・女王を除去し、ワーカー型置換生殖虫の出現後に生まれた子に対して、MS分析を行った。王・女王の除去により生産されたニンフの多くは単為生殖で生産されること、王・女王存在下で単為生殖が抑制されること、が示された。ニンフ分化は、遺伝的効果・フェロモン・単為生殖抑制の3つにより調節されると考えられる。また、(2)異なる交配で生じた「ニンフ遺伝子型」♀卵の、ワーカー化フェロモンによる誘導への感受性を調べた。内・外交配で生じた卵では、誘導効果は中程度だった。単為生殖卵の場合、♀親の母巣により効果が強い場合と弱い場合に分かれた。誘導の感受性の遺伝的影響が示唆される。さらに、(3)ワーカー化フェロモンへの個体の感受期を継続して調べた。フェロモンの効果は、卵から1齢までの発生初期に強い効果を及ぼすが、この時期が決定的なわけではなく、2齢まで継続的に効果を表すことが示された。
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Research Products
(18 results)