2008 Fiscal Year Annual Research Report
種多様な森林生態系における土壌ポリフェノールと局在化土壌微生物群集の形成
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19370010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北山 兼弘 Kyoto University, 生態学研究センター, 教授 (20324684)
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Keywords | フィードバック / 窒素無機化 / 土壌微生物群集 / 共存メカニズム / 土壌酵素 / 縮合タンニン / 総フェノール / ニッチ分割 |
Research Abstract |
本年度は、土壌微生物群集の組成、活性に対する針葉樹由来のポリフェノールの効果を接種実験によって検証した。まず、調査区の森林で優占している針葉樹1種の生葉から、有機溶媒とカラムを用いて縮合タンニン(ポリフェノールの1群)を抽出、粗精製し、接種用の縮合タンニンを得た。その後、調査区内で優占する針葉樹1種と広葉樹1種について、それぞれ5反復の個体を選定した。選定した樹木個体の樹冠下の土壌において、縮合タンニン接種区には蒸留水に溶かした縮合タンニンを接種し、隣接した対照区には蒸留水のみを接種した。土壌への縮合タンニン接種から1週間、経時的に土壌呼吸量を測定した。その結果、縮合タンニン接種区で土壌呼吸速度が低下した。また、縮合タンニン接種前後で窒素、リン、ポリフェノールの無機化に関わる土壌酵素活性を調べたところ、縮合タンニン接種区でほとんどの酵素活性が低下した。一方で、縮合タンニン接種の効果は針葉樹樹冠下でも広葉樹樹冠下でも同様であった。土壌微生物群集の組成は、マーカーとなる微生物群特異的な脂質を凍結乾燥した土壌試料から抽出する手法で分析した。実際の分析作業は、大学院生が土壌試料を協力研究室であるウィスコンシン大学のTeri Balser実験室に携行して行った。その結果、縮合タンニン接種区では真菌類由来の脂質濃度が上昇していた。実験室内での土壌培養実験では、縮合タンニン接種区での土壌微生物の無機化活性の低下、真菌類由来の脂質濃度の上昇は、野外接種実験に比べていっそう顕著であった。
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