2010 Fiscal Year Annual Research Report
種多様な森林生態系における土壌ポリフェノールと局在化土壌微生物群集の形成
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19370010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北山 兼弘 京都大学, 農学研究科, 教授 (20324684)
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Keywords | フィードバック / 窒素無機化 / 土壌微生物群集 / 共存メカニズム / 土壌酵素 / 縮合タンニン総フェノール / 総フェノール / ニッチ分割 |
Research Abstract |
昨年度までは、葉リターに含まれるポリフェノール物質の土壌生態系への影響を調べてきたが、当年度は根から土壌に滲出するポリフェノールあるいは根が枯死した際に土壌に加入するポリフェノールの影響を明らかにした。試験地の中で優占するマキ科針葉樹1種とブナ科広葉樹1種の細根を採集し、凍結乾燥後に有機溶剤で総ポリフェノールと縮合タンニンを抽出し分光光度計により濃度を決定した。総ポリフェノール濃度の平均は15~20mg/gであり、有意な種間差はなかった。これらの種について、生根から土壌に滲出するポリフェノールのフラックスを測定するため、培養液を含んだシリンジを取り付け、シリンジ内に溶出してくるポリフェノールの濃度と時間の関係からポリフェノール・フラックスを決定した。タンニン酸換算の滲出物フラックスは300~1900μg/細根g/dayと大きな変異を示したが、平均値はブナ科広葉樹が高かった。細根に含まれるポリフェノールが土壌に与える影響については、円筒の中に両種の細根と土壌の混合物を入れ、土壌に埋設して分解を促し6ヶ月後に回収して土壌中の総ポリフェノール濃度と無機態窒素濃度を決定して検証した。この際に、各種について円筒を針葉樹の葉リターで覆ったものと覆わないものの2つの組み合わせを設けた。6ヶ月の培養後、針葉樹の葉リターで覆った針葉樹の根入り土壌の無機態窒素濃度はコントロール(根なし)よりも有意に低下したが、覆わなかった場合にはコントロールとは有意な差がなかった。以上の実験結果から、根や根の滲出物にはポリフェノールが含まれるものの、昨年度まで見られた針葉樹が与える土壌窒素無機化と土壌微生物の酵素活性への抑制的な影響は、根よりもむしろ葉リターによって引き起こされていることが示された。
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