2008 Fiscal Year Annual Research Report
送粉シンドロームのシフトに関する実験進化生態学的研究:キスゲとハマカンゾウを例に
Project/Area Number |
19370012
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
矢原 徹一 Kyushu University, 理学研究院, 教授 (90158048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川窪 伸光 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (60204690)
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60282315)
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Keywords | 送粉 / 花香 / 花色 / 開花時間 / 種分化 / キスゲ属 |
Research Abstract |
ハマカンゾウは昼間に開花し、赤い花をつけ、花香はなく、主としてアゲハチョウ類に送粉される。 キスゲは夜間に開花し、黄色い花をつけ、花香を持ち、主としてスズメガ類に送粉される。本研究は、このような対照的な2種の花形質の遺伝的基礎を明らかにするとともに、ハマカンゾウ集団に、花色・花香のいずれかが単独で変化した変異体が進入した状態を実験的に再現し、種分化の初期過程を実験的に解析することを目的として実施した。花色の遺伝的基礎に関しては、アントシアニン合成経路の遺伝子の発現解析を行った。その結果、予想に反して、黄色い花をもつキスゲにおいてもアントシアニン合成経路の遺伝子が発現されていることが明らかになった。アントシアニン生産に関しては、種差は量的なものであり、2種の花色の差を大きく決めているのはカロテノイド系色素だと考えられる。花香に関しては、ガスクロマトグラフィによる分析の結果、リナロールとαファルネセンがキスゲ特有の成分であることが判明した。ハマカンゾウとF2からなる野外実験集団への昆虫の訪花行動を観察した結果、アゲハチョウ類は一貫して赤色を好むが、スズメガ類は訪花回数に応じて選好性を変化させる(黄色を訪問したあとは赤色に好みを転じる)ことが示唆された。しかし、両者ともに花香に関しては、近距離では顕著な選好性を示さなかった。これらの結果から、アゲハチョウ媒からススメガ媒への進化の初期過程では、アントシアニン系色素ではなくカロテノイド系色素の変化が重要だったと考えられる。
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