2008 Fiscal Year Annual Research Report
高等植物の環境ストレス応答における遺伝子発現制御とネットワークの解明
Project/Area Number |
19370016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
篠崎 和子 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30221295)
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Keywords | 転写因子 / E3リガーゼ / ユビキチン化 / リポーター遺伝子 / 遺伝子破壊株 |
Research Abstract |
植物は温度や水分環境の変化に応答して自らの生育や生理状態を変化させることで、より厳しい生育環境にも耐えることができるようになる。本研究課題は、高温や水分ストレスに応答した耐性遺伝子の発現機構において重要な機能を示す転写因子DREB2Aの活性化機構と下流遺伝子の発現制御機構を明らかにすることを目的としている。 (1)DREB2Aを不安定化していると考えられるE3リガーゼの遺伝子を過剰発現あるいは破壊したシロイヌナズナを用い、乾燥誘導性遺伝子の発現を解析した。運伝子破壊株では、ストレスのないときにも乾燥誘導性遺伝子が発現していた。乾燥に応答した遺伝子発現は、過剰発現株では遅延したが、逆に遺伝子破壊株では強くなっていたことから、このE3リガーゼは、乾燥応答性遺伝子の発現を負に制御していることが明らかになった。この機構はご乾燥ストレスへの迅速な応答を可能にしていると考えられる。(2)DREB2A下流遺伝子の発現調節機構を調べるため、DREB2Aの標的遺伝子から乾燥または高温特異的に発現する遺伝子を選抜し、プロモータごに特異性を決める配列が存在するかどうか検討した。レポーター遺伝子を用いた解析の結果、DREB2Aの結合配列であるDREを含む50塩基対程度の断片内に特異性を決める配列が存在していることがわかった。(3)イネやトウモロコシのDREB2A相同遺伝子は、シロイヌナズナのDREB2Aとは対照的に、プロトプラストー過的発現系では活性型であった。これらの遺伝子をシロイヌナズナで過剰発現させたところ、シロイヌナズナの活性型DREB2Aの場合と同様に、導入遺伝子の発現レベルに相関して生育が遅延し、乾燥あるいは高温誘導性遺伝子の発現が認められた。これらのことからシロイヌナズナとイネ科植物ではDREB2A相同遺伝子の活性調節機構は違っているが、標的の決定機構は共通である可能性が示唆された。
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