2007 Fiscal Year Annual Research Report
土壌性原生生物,特に「鞭毛虫類」の多様性と系統の解明
Project/Area Number |
19370031
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堀口 健雄 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 教授 (20212201)
|
Keywords | 土壌性鞭毛虫 / 原生生物 / 多様性 / 分子系統解析 / 微細構造 / 大黒島 |
Research Abstract |
土壌性鞭毛虫類の多様性と系統を解明するために,本年度はおもに北海道札幌市および厚岸の大黒島を中心として合計9カ所において調査をおこなった。表層10cm以内で採取した0.1gの土壌と液体培地とを混合して粗培養を行ない,約1週間以内に出現した鞭毛虫類を単離した。結果として約100株の培養株を確立することに成功した。各々の培養株について光学顕微鏡に基づく形態観察,一部のものについてはSSUrDNAに基づく分子系統解析,電子顕微鏡による形態観察を行なった。その結果,単離された従属栄養性鞭毛虫類は大きく,ゴニオモナス類,ストラメノパイル類(黄金色藻類),ケルコモナス類,キネトプラスト類の4つのいずれかのグループに属することが明らかとなった。ゴニオモナス類は1株のみが大黒島から分離されたもので,既知の種類と比較したところ新種である可能性が示唆された。黄金色藻類に属する36株についてSSUrDNA配列に基づく分子系統解析を行なった結果,これらは6つのグループに分かれることが明らかとなり,土壌性の黄金色藻類が今まで知られている以上に多様であることを明らかにした。ケルコモナス類では,Cercomonas, Thaumatomonas, Heteromita属に属する株が得られた。種レベルの同定は今後の課題である。また,キネトプラスト類については35株が分離されたが,これらに関する詳細な研究は来年度以降の課題である。以上,初年度の研究において,土壌性鞭毛虫類の多様性の概要が徐々に明らかになってきた。今後は,他の地域の試料を調査するとともに,種レベルの同定に向けた個別の研究が必要であろう。
|