2010 Fiscal Year Annual Research Report
サブミリ秒領域で探る超異方的ダイナミクスとフラストレーションの蛋白質機能への役割
Project/Area Number |
19370062
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北尾 彰朗 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (30252422)
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Keywords | タンパク質 / 超異方性 / 動態 / 機能 / フラストレーション |
Research Abstract |
本課題では、広い時空間で蛋白質分子機能の詳細な原理を解明するため、これまで十分な知見が得られてこなかったナノからサブマイクロ秒領域のダイナミクスに注目し、分子シミュレーションを用いて機能と密接に結びつく蛋白質ダイナミクスを観察し、超異方性とフラストレーションという観点から明らかにすることを研究目的として、研究を進めてきた。最終年度である平成22年度は、B.エネルギー地形解析とC.摂動の効果で大きな成果があった。B.エネルギー地形解析では、前年度から開発してきた超並列・分散型マルチスケールシミュレーションであるMSFEL法の開発が終わり、論文1報が報告済み(Harada & Kitao, CPL,2011)、1報が投稿中、3報が投稿準備中(すべてHarada & Kitao)となっている。この手法でははまず粗視化モデルで自由エネルギー地形を大雑把にサンプリングしてから、局所的な地形をあらわに溶媒を含めた全原子シミュレーションでサンプリングすることで高精度・高効率の計算をすることができる。MSFELにおいてシミュレーション時間の大半を占める全原子シミュレーションは、異なる構造空間を全く独立な多数のシミュレーションとして同時に実行できるので、次世代スパコンのような超系列計算機や分散した計算機を用いても効率よく計算できるアルゴリズムになっている。C.摂動の効果では、MSFELによってアミノ酸置換によるミニタンパク質の自由エネルギー地形の変化を明らかにし、フォールディング経路や安定構造の変化を詳細に解析することに成功した。またD.機能ダイナミクス相関では昨年度開発して投稿中であった独立部分空間解析の論文がいくつかの修正を経て報告済みとなった((Sakuraba, et al., JCP, 2010)。この手法では、カップリングをよりシステマティックに解析するために、独立部分空間解析を用いて有意に相関を持つ集団座標を決定する手法を開発し、厳密な数学的な枠組みでダイナミックスのカップリングを解析できる。この論文はJCPのJournal CoverになりResearch highlightsにも選ばれるなど高く評価されている。
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Research Products
(28 results)