2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19370096
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中村 輝 The Institute of Physical and Chemical Research, 生殖系列研究チーム, チームリーダー (90323245)
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Keywords | ショウジョウバエ / 生殖質 / 細胞極性 / 生殖細胞 / RNA局在 / エンドソーム / 突然変異 / 細胞骨格 |
Research Abstract |
細胞の極性は,しばしばmRNAの細胞室内局在によって確立される。ショウジョウバエ卵形成過程では,oskar(osk)mRNAが卵母細胞後極に局在することにより生殖質が形成される。osk mRNAは2つのアイソフォーム(long Oskとshort Osk)を作り出すことが知られている。Short Oskは様々な生殖質因子をリクルートすることに機能する。一方,long OskはFアクチン系を制御すると共に生殖質因子の卵母細胞後極皮層への係留に必要であることが知られている。しかし,これらOskの持つ分子機能についてはよく分かっていない。我々は,生殖質因子の一つであるVasaとGFPとの融合蛋白質を発現する系統を用いて,生殖質形成が異常となる突然変異体を多数単離した。これらの内の1つは,エンドソーム膜輸送因子(Rab5)のエフェクター蛋白質であるRabenosyn5(Rbsn5)の突然変異であった。詳細な解析により,Rbsn5は微小管系の極性維持に必要であり,生殖質形成は微小管極性の異常により2次的に引き起こされていることを明らかにした。一方,Rbsn5を初めとするエンドソーム蛋白質が後極に局在する事,long Oskの卵母細胞前極への異所的発現によって前極にリクルートされることを見いだした。さらに,rbsn5を欠く卵母細胞でOskを前極に発現させると,本来皮層に係留されるはずの生殖質因子が,Fアクチンの凝集体と共に細胞質中に拡散することを明らかにした。すなわち,long Oskはエンドソーム経路を介したFアクチン系の制御を通して,生殖質因子を卵母細胞皮層に係留していると考えられた。mRNA局在は,神経細胞を初めとして広く体細胞でも観察される現象であることから,このような膜輸送系を介したmRNA局在による細胞極性制御機構は普遍的である可能性がある。
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