2007 Fiscal Year Annual Research Report
初期胚パターン形成におけるWntシグナル促進因子Tsh3の機能解析
Project/Area Number |
19370097
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
笹井 芳樹 The Institute of Physical and Chemical Research, 細胞分化・器官発生研究, グループディレクタ (20283616)
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Keywords | Tsh3 / Wnt / beta-catenin / 転写因子 / 核内因子 / アフリカツメガエル / 初期発生 / 体軸形成 |
Research Abstract |
我々は、これまでにSalFという転写因子がWntシグナルへの細胞反応性を負に制御する因子として機能することをアフリカツメガエルの初期発生系で明らかにしてきた。今回、SalFと拮抗する可能性のある因子の探索から、核内タンパクTsh3(Teashirt-related 3)が脊椎動物初期胚の体軸極性を制御する必須因子であることを見いだした。本年度は、この核内因子の初期胚における機能と制御機序の詳細に検討した。特に背腹軸の形成および中枢神経系のパターン形成におけるTsh3の役割を、アフリカツメガエル胚を用いて解析を行い、Tsh3-MOを中胚葉(特に背側)にも作用させたところ、背側の発生が抑制され、胚全体が強く腹側化することを見出した。逆にTsh3の強制発現は胚を背側化した。さらに Tsh3 が Wnt の canonicalシグナル経路にどのように作用するかを解明した結果、Tsh3はWntシグナルを増強し、Tsh3の機能阻害ではWntシグナルが減弱することを発見した。さらに、タンパク質レベルの解析から,核内因子Tsh3はWntシグナルカスケードの下流伝達因子であるbeta-cateninおよびTcf3と結合することが判明した。Tsh3の機能阻害実験から、Tsh3 はbeta-cateninが効率よく核内に蓄積するのに必須であることが判明した。Tsh3のWntシグナル増強は、Wntシグナルが一定以上あることが必要であり、シグナルのアンプリファイアとして働くことが考えられた。このことは初期発生におけるパターン制御の分子的機序を、細胞内因子と細胞外因子Wntとの相互作用の観点から興味深い。
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Research Products
(3 results)