2007 Fiscal Year Annual Research Report
対照的な集団構造を持つ樹種での遺伝子進化特性に関する集団遺伝学的研究
Project/Area Number |
19370099
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
舘田 英典 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 教授 (70216985)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津村 義彦 九州大学, 森林総合研究所, 室長 (20353774)
矢原 徹一 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90158048)
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60282315)
|
Keywords | 集団構造 / 適応進化 / 樹木進化 / 多重遺伝子族 / 集団遺伝学 / 生活史 |
Research Abstract |
本研究では異なる集団構造と生活史を持つ3樹種(スギ、ヌマスギ、カラスザンショウ)を材料とし、集団動態の情報を得るとともに遺伝的多様性を集団遺伝学的手法により解析する。得られた結果を使って3樹種間で遺伝子進化の様相を比較することにより、集団構造と遺伝子適応進化の関係を明らかにする。 カラスザンショウについては、九州の集団で核4遺伝子座の多型を調査し、集団間に遺伝的分化が見られることを明らかにした。またagpL遺伝子座が他の遺伝子座に較べ有意に多型の程度が低く、この遺伝子座で最近適応的置換が起こったことを示唆した。更に九州大学伊都キャンパスの生物多様性保全ゾーン3ケ所より、種子、稚樹および親木の葉を採集し、マイクロサテライト9マーカーを用いてこれらの個体間の遺伝的関係を調査し、少数の母樹が次世代に寄与していることを明らかにした。一花粉PCR法を使った核遺伝子の塩基配列決定については現在条件の検討中である。 スギについては、既に7遺伝子の塩基配列データを得ているので、残りの5遺伝子について48個体の種子胚乳より得られた半数体DNAを使って塩基配列を決定した。両データを合わせて解析することにより、スギでは集団が緩やかに縮小していることを明らかにした。また屋久島と岩手の集団それぞれから得た8個体についてCD657多重遺伝子族(R遺伝子)遺伝子の多様性を調査し、非同義置換率が同義置換率を大きく上回り、この遺伝子族で適応進化が起こっている可能性を示唆した。 ヌマスギについてはミシシッピー川沿岸から得た45個体の胚乳由来半数体DNAを用いて、10遺伝子座で塩基配列決定を行った。その結果スギ集団と異なりヌマスギでは集団の増大が起きていること、またヌマスギの二変種baldcypxessとpond cypressで遺伝的分化を起こしている遺伝子座が少数存在することを見いだした。
|