2009 Fiscal Year Annual Research Report
対照的な集団構造を持つ樹種での遺伝子進化特性に関する集団遺伝学的研究
Project/Area Number |
19370099
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
舘田 英典 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 教授 (70216985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60282315)
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Keywords | 集団構造 / 適応進化 / 樹木進化 / 多重遺伝子族 / 集団遺伝学 / 生活史 |
Research Abstract |
本研究では異なる集団構造と生活史を持つ3樹種(スギ、ヌマスギ、カラスザンショウ)を材料とし、集団動態の情報を得るとともに遺伝的多様性を集団遺伝学的手法により解析する。得られた結果を使って3樹種間で遺伝子進化の様相を比較することにより、集団構造と遺伝子適応進化の関係を明らかにする。 今年度はカラスザンショウと同じく撹乱依存種であるが樹高等が異なるため林内での分布や集団動態が若干異なっている近縁種イヌザンショウ(Zanthoxylum schinifolium)も加え、10核遺伝子座の塩基配列を用いて、3集団(福岡、南九州、伊豆)の遺伝的構造を両種で比較した。その結果、1)両種とも集団間の遺伝的分化の程度(F_<ST>)は福岡-南九州間で高く、福岡-伊豆間で低い、2)イヌザンショウの方が平均的にF_<ST>の推定値が高い、3)Tajima's D等の中立性検定統計量は、イヌザンショウでは負、カラスザンショウでは正を示す傾向が強く、スギ・ヌマスギの場合と同様に集団の歴史の違いが明らかになった。一方スギの近縁種ヌマスギ(Taxodium distichum)についてはマイクロサテライト12遺伝子座を用いて生育域をほぼカバーする北米中部および東部の合計18集団を解析した。その結果この種では全遺伝的変異のうち地域間の変異が9.75%、地域内集団間の変異が15.4%となり、スギに較べて集団間に強い遺伝的分化があることが明らかになった。 三年間の成果をまとめると、競争種スギ・ヌマスギ、撹乱依存種カラスザンショウ・イヌザンショウの比較から、後者のペアの樹種では前者に較べ集団間分化が進んでいるが明らかになった。それだけではなく同じグループに属する近縁種間でも集団(サイズの増減等)の歴史が異なっており、遺伝子進化に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。
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