2009 Fiscal Year Annual Research Report
シロアリ腸内の原生生物と細胞共生細菌の代謝共生機構の解明
Project/Area Number |
19380055
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大熊 盛也 The Institute of Physical and Chemical Research, 微生物材料開発室, 室長 (10270597)
|
Keywords | 共生 / 細胞内共生細菌 / 細胞表層共生 / 原生生物 / シロアリ / 難培養微生物 / 微生物ゲノム / 共進化 |
Research Abstract |
シロアリ腸内に高密度で生息する原生生物(単細胞の真核生物)と腸内細菌の大半を占める原生生物の細胞共生細菌は、腸内全体の代謝のほとんどを担うと考えられ、これらの細胞レベルでの共生機構を解明し、シロアリ共生微生物群によるバイオマス資源の効率的な利用について理解することを目的とする。特にセルロース分解に重要な大型原生生物の細胞内共生細菌のうち、未培養新門TG1とBacteroidales目のものは宿主原生生物と共進化が認められ、昨年度培養を介さずに完全ゲノムを解読して共生機構を解明した。原生生物の細胞表層にもBacteroidales目細菌の共生が見られるが、ゲノム解析に着手するにあたり、数多くの原生生物種で同定して分子系統学的に比較した。その結果、原生生物属によって腸内の細菌群のなかから別種の共生細菌を独立して獲得し、原生生物-共生細菌の示す独特の形態は収斂進化の結果であると考えられた。近縁の原生生物種では共生細菌との共進化が示唆された。また、TG1門の細胞内共生細菌をもつ原生生物Trichonympha agilisにはDesulfovibrio属の細菌も細胞内共生しており、宿主原生生物細胞に対してTG1門細菌とは異なる局在を示すことを明らかにした。Desulfovibrio属の細胞内共生細菌は、宿主の水素産生細胞内小器官ヒドロゲノソームの密集した近辺に局在しており、水素利用と硫酸還元に働く遺伝子群を発現させて潜在的な活性を有していると考えられたが、腸内の硫酸塩濃度は低く、硫酸塩以外の水素利用のための電子受容体の関与が示唆された。原生生物細胞における細菌との共生は、複数種の細菌が関わるより複雑なものであった。シロアリ腸内の原生生物の細胞構造の進化についても、数多くの原生生物種の分子系統を解析して、複雑化と単純化が繰り返し何度も生じた複雑な進化であったことも推定した。
|
Research Products
(15 results)