2009 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光偏光解消法によるユビキチン関連因子等の未知ターゲット探索
Project/Area Number |
19380056
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
阿部 文快 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 海洋・極限環境生物圏領域, チームリーダー (30360746)
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Keywords | 蛍光偏光解消法 / 時間分解測定 / 細胞膜物性 / 蛍光寿命 / 出芽酵母 / ユビキチン機構 / 回転ブラウン運動 |
Research Abstract |
1.出芽酵母では、細胞膜の剛直性を維持する上でエルゴステロールが重要な役割を果たしている。エルゴステロール合成の後期過程を担う遺伝子ERG6,ERG2,ERG3,ERG5およびERG4は単独破壊でも致死とはならないが、ERG6,ERG2,ERG3遺伝子の単独破壊株は25MPaにおける高圧感受性を示す。細胞膜は圧力や温度の摂動を最も受けやすい構造体の一つであり、エルゴステロールの欠損が膜構造に何らかの影響を及ぼす可能性が示唆された。細胞膜の動的構造を明らかにするため、時間分解蛍光偏光解消法による計測法を確立しその応用を行った。具体的には、細胞膜を蛍光偏光プローブTMA-DPHでラベルし、野生株とエルゴステロール合成変異株との間で膜の秩序因子や脂質の回転ブラウン運動について比較を行った。その結果、ERG2欠損株において膜秩序が最も低下し、それに伴い脂質の運動性が著しく増大することがわかった。脂質の回転ブラウン運動の増大は膜内部のすき間の増大に相関することから、変異株では膜の圧縮が高圧感受性の原因の1つであることが示唆された。 2.抗真菌剤であるフルコナゾールは、エルゴステロール合成を阻害して毒性を発揮する。毒性の主要因はジオールの膜への蓄積にあるが、膜構造にどのような影響を及ぼすのかは不明だった。フルコナゾール投与後の膜物性を調べたところ、膜の剛直性が劇的に低下し、やはり脂質の回転ブラウン運動が増大していることがわかった。こうした膜の不安定化がアゾール系抗真菌剤作用の実態であることが示唆された。以上の結果は、酵母細胞が示す表現型を膜物性の観点から定量的に解釈した初めての成果である。
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Research Products
(7 results)