2008 Fiscal Year Annual Research Report
樹木個体群における自然選択に対する遺伝適応の実態解明
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19380081
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 晋 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (60323474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 系子 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (00343814)
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Keywords | 光合成 / 表現型可塑性 / マイクロサテライト / クライン / 分布変遷 / 産地試験 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き、自然個体群3集団の環境条件を測定するとともに、個体、シュート、個葉レベルでの形態形質、生理分析、遺伝解析を行った。環境要因について、主成分分析を行った結果、平均気温、紫外線量(UV-B)などは標高とパラレルに反応するが,湿度、土壌含水率、土壌pN、士壌窒素濃度などは標高とは関係なくサイト特異的であることが示された。形態特性について、個体レベルでみると、標高が高いほど樹高が低く、樹冠長が狭いこと、さらに樹高/DBHが小さいことが示された。すなわち、高山になるほどずんぐりした形態を持つことが示された。シュートレベルでは、葉密度は標高が高いほど大きく、個葉レベルでは、標高が高いほど、厚み成分が大きくなる傾向が認められた。生理条件を調べた結果、クロロフィルa+b量は標高が高いほど大きいと考えられた。一方、葉の窒素濃度は標高とは無関係であった。すなわち、紫外線量が多く、気温が低いなど、厳しい気象条件である高標高域では、頑丈な厚い葉を密度高く作っていることが考えられた。 標高の増加に伴う形質の変化が遺伝的に固定されているものかを明らかにするために、同一種子産地(標高700m付近)を530、730、930、1100mの4標高域に植栽した標高別造林試験地からもアカエゾマツのシュートを採取し、形態形質を調べた。その結果、標高別試験地では標高の増加に伴い、1年生葉のSLA(葉面積/葉重量)は減少し、個葉の厚みは標高が高いほど厚くなる傾向が認められた。このように形態変化の一部は遺伝子型と環境の交互作川が認められないことが示された。一方、必ずしも標高が高いほど葉密度は高いとはいえず、形質によって異なることが示された。 平成20年度の科研費の一部を平成21年度に繰り越し、平成21年7月に、標高別造林試験地の各個体の1年生シュートからランダムに葉を採取し、葉の窒素濃度、葉のC/N比、葉のクロロフィルaとbの総量及び比率を測定した結果、クロロフィルabの総量/窒素量が標高勾配に沿ったクラインを示した。クロロフィル量は集光系への投資量であるため、窒素量に対するクロロフィル量は集光系への投資の割合を示すと考えられる。高標高域でクロロフィル量/窒素量が減少していたことは、高標高城では光を集めないようにしていることを示唆する。
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Research Products
(1 results)