2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19380084
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
梶 光一 Tokyo University of Agriculture and Technology, 共生科学技術研究科(研究院), 教授 (70436674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮木 雅美 北海道環境科学研究センター, 自然環境部, 部長 (60442604)
鈴木 正嗣 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90216440)
高橋 裕史 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所・生物多様性グループ, 主任研究員 (60399780)
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Keywords | エゾシカ / 爆発的増加 / 個体群動態 / 餌資源制限 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度(平成20年度)に引き続き、低質な餌(落葉)に依存しながら、高密度状態が維持されている洞爺湖中島と、ササが利用可能で、爆発的増加と群の崩壊が繰り返されている知床岬において、個体数のモニタリング、群れカウント(中島のみ)、生息地評価のためのプロット設定、採餌植物の栄養分析、捕獲個体調査(知床岬のみ)を実施した。 洞爺湖中島のエゾシカの2009年3月の推定個体数は252頭(生息密度49頭/km2)であり、2008年3月の246頭(47頭/km2)とほぼ同様で、高密度状態が維持されていた。中島個体群は生息地の質的低下によって、体サイズの小型化と初産齢の上昇が生じているが、3歳以上の妊娠率は高い値を示している。餌資源制限は子の冬季死亡率に影響し,一冬に生残した子の数,すなわち春季子連れ率が個体群制御に強い影響を与えた。洞爺湖中島では,群の崩壊を生き延びた個体群が極度な餌資源制限下で代替餌を開拓し,成長を犠牲にして繁殖力を維持してきた。落葉は初夏までは高い栄養価をたもち、冬季にもカロリーが高い餌であり、冬季気象が穏やかであれば高密度個体群を維持することが可能である。 一方、知床岬の個体群は体格が大きく、妊娠率が高い高質個体群として維持されている。夏季の大量にあるイネ科草本と冬季に栄養価の高いササを利用することによって、高密度が維持されているが、厳しい冬には積雪によって越冬数の上限が決定されるために群れの崩壊が生じる。以上から、生息地の餌の質と冬季の気象の相違が、対照的な個体群動態をもたらせたと考えられる。
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