Research Abstract |
斜面の表層崩壊発生に関して,斜面土壌内の水分挙動に関する情報が重要であることが指摘されている。これまで地盤内の水分挙動を把握するために,埋設型の土壌水分計が用いられてきたが,センサーの空間的な分解能が低くセンサー数によって計測範囲が限定されるという問題がある。このため,間接的な計測方法である電気探査を用いて,広範囲を対象とした土壌内水分挙動を探査することができれば,情報量が飛躍的に増加する。そこでH20年度の研究では,特に,山地斜面の同一測線上で,電気探査と高密度に配置した土壌水分計による経時観測を行い,その観測結果を比較した。 勾配約28度の斜面において,縦断方向に電気探査と水分計の測線を10cmほど離して並列に設置した。電気探査に用いた装置はE60CN MERS(GeoPen社製)で,電極間隔は水平距離で50cmとし,計11か所に電極を設置した。一方,土壌水分計にはキャパシタンスメーターを用い,水平距離で約50cm間隔,計10か所(上流側より,No.1〜10)埋設し,全長約4.7mの測線を設定した。電気探査は1時間ごとで自動計測を,水分計は1か所につき深度10cmから50cmまでの10cmごとの計50点について,5分間隔で自動計測を行った。 測線端にあるNo.1地点では降雨と無関係な比抵抗値の変動が見られ,降雨に対する比抵抗値の変動が体積含水率の変動と必ずしも対応しない結果となった。また,下層の比抵抗計測値が上層の比抵抗値変動の影響を大きく受けることがわかった。それに対し,測線中央のNo.6地点では良好な対応関係が見られた。特に,異なる深度における比抵抗計測値が,それぞれの深度の含水率変化と良好な対応を示すことが分かった。各地点・深度ごとに体積含水率と比抵抗値の相関をとった結果,側線の中央部分では相関が高い一方で,測線端では相関が低くなった。これらの結果から,測線長を解析領域よりも十分大きく設定することにより,電気探査によって山地斜面表層の水分挙動が把握できることが明らかとなった。
|