Research Abstract |
日本列島では,北米やオーストラリアなどと比べると,現在における火事の頻度も規模も大きくない。ところが,最近の古生態学的研究によって,この約1万年間に火事が多発していたことが明らかになってきた(井上ほか,2001,2005)。1万年前から7千年前にかけて琵琶湖集水域において,火事が頻発していた。さらに,京都周辺の山地においても,この時期に火事が頻発していた。さらには,人口の増加する弥生時代以降には,火事が多発し,二次林化が起こっていたことも,明らかになりつつある。本研究では,このような植生に及ぼした野火の影響を解明することを目的としている。 (1)野火と植生の関係の歴史を解明するための古生態学的研究について,方法論(微粒炭の形態,花粉のSEMによる形態など)を確立する。 (2)西日本において,過去1万年間に,火事が多発していたことを考慮に入れて,西日本各地において,堆積物の花粉分析や微粒炭分析によって,植生の成立過程と火の歴史を解明し,各地域における火が植生に与えた影響を明らかにする。 (3)クリ,カシワなどの落葉広葉樹林や草原植生などの成立・維持機構を解明する。 (4)これらを総合して,1万年以上にわたる「火と植生の関係史の解明」と「火が植生に及ぼす影響の解明」を連携して研究を進め,現在の里山景観の形成過程をまとめる。
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