2008 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の浸透圧調節機構における鰓、腸、腎臓の相互作用および内分泌系による機能の統合
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19380109
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 豊二 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (70221190)
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Keywords | ティラピア / プロラクチン / 水チャネル / 浸透圧変化感知機構 / プロラクチン分泌ペプチド / 浸透圧調節 / 下垂体 |
Research Abstract |
本研究ではまず、ティラピアにおける下垂体プロラクチン(PRL)細胞の浸透圧変化感知機構に水チャネル分子AQP3が関与するかについて検討した。PRL細胞におけるAQP3の発現動態を定量PCRによって解析したところ、PRLと同様、淡水飼育魚において高いことが示された。また免疫染色によりPRL細胞において細胞膜上および核周辺部にAQP3の局在が確認されたが、その反応性も淡水個体において強く、これらより淡水個体のPRL細胞の方が高い水透過性を有する細胞膜を持つことが示唆された。このことは淡水および海水個体PRL細胞の低浸透圧刺激時細胞体積変化の解析結果と一致し、PRL細胞の浸透圧変化に対する細胞体積変化の応答性にAQP3が関与していることが示唆された。さらにAQP3の阻害剤である水銀処理によって淡水PRL細胞の低浸透圧刺激時細胞体積変化は抑制され、低浸透圧刺激時PRL分泌促進も阻害された。以上の結果からAQP3がPRL細胞の浸透圧変化感知機構の高感度化に寄与していることが示された。 次にPRL細胞の活性制御メカニズムについて調べたところ、PRL細胞の浸透圧変化感知機構はPRLの遺伝子発現制御には関与しないことが示された。また単離培養条件下で淡水と海水個体間のPRL発現活性の差は保たれることからPRL発現調節は継続的な制御を必要としないことも示された。さらにPRL分泌ペプチド(PrRP)の関与を検討した結果、PRL発現上昇作用が海水個体由来PRL細胞において示された。そこでPrRPレセプターをPRL細胞より同定したところ、下垂体を含む様々な組織に発現が確認され、PRL細胞においてはその発現量は飼育環境によって変動しないことが示された。これらの結果より、PrRPが海水個体においてPRL発現活性の上昇に関与することが示唆された。 以上のことから、これまで考えられてきた中枢神経系に端を発する統合的浸透圧調節制御カスケードに加えて、体液浸透圧を直接感知することでカスケードの各段階に自己機能を調整する機構が存在すると考えられる。
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Research Products
(5 results)