2009 Fiscal Year Annual Research Report
深海の熱水噴出域への適応機構をアミノ酸輸送体から探る
Project/Area Number |
19380110
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 広滋 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (60323630)
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Keywords | 特殊環境 / 生理学 / 共生 / 適応 / 深海 / アミノ酸輸送体 / チオタウリン / 海洋科学 |
Research Abstract |
共生細菌を持つ熱水噴出域固有生物が体内に大量に含む含硫アミノ酸チオタウリンは、硫化物の無毒化や硫黄酸化細菌との共生に関与している可能性が高い。本研究では、チオタウリンやその前駆体を輸送するアミノ酸輸送体(タウリン輸送体;TAUT)の解析から、熱水域への適応や共生の仕組みの解明を試みている。 本年度は、深海の熱水噴出域に生息し、鰓にイオウ酸化細菌を共生させているシチヨウシンカイヒバリガイをカゴに入れ、熱水噴出口から離れた場所に移植して1年間放置した個体についてTAUTmRNAをリアルタイムPCR法により定量し、移植前の個体と比較したところ、移植前より有意にmRNA量が低下していることが明らかになった。また、ヒポタウリンやタウリンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量したところ、タウリン関連化合物の総量、チオタウリン量とも移植により低下していることがわかった。これらの結果は、シチヨウシンカイヒバリガイが、環境中の硫化物濃度によりTAUT遺伝子の発現量を調節し、それにより硫化物の無毒化に必要なタウリン関連化合物を細胞内蓄積量を調節している可能性が示唆された。(論文として発表) また、シチヨウシンカイヒバリガイは、熱水噴出域固有生物としては例外的に、実験室内で飼育することが可能である。硫化物濃度の異なる水槽においてシチヨウシンカイヒバリガイを飼育し、上記の実験結果の再現を試みたが、平成22年の航海で得た個体は極めて活性が低く、有意な結果が得られなかった。繰り越し中請を行って平成23年に新たな個体を採集して飼育実験を行い、TAUT遺伝子の遺伝子発現を解析した。結果は近日中に報告する予定である。
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Research Products
(6 results)