2007 Fiscal Year Annual Research Report
有明海におけるシログチ仔稚魚の輸送・減耗過程:最近年の魚類資源減少の要因を探る
Project/Area Number |
19380113
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中田 英昭 Nagasaki University, 水産学部, 教授 (60114584)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 敦子 長崎大学, 水産学部, 准教授 (10310658)
万田 敦昌 長崎大学, 水産学部, 准教授 (00343343)
|
Keywords | 水産学 / 海洋環境 / 魚類資源 / 生物輸送 |
Research Abstract |
本研究は、有明海において最近年急激に資源が減少する傾向を示している底棲性魚類資源の代表種としてシログチをとりあげ、その資源変動に重要な中央部の産卵場から奥部の成育場への仔稚魚の輸送とそれに伴う減耗に関与する要因を明らかにすることを目的としている。19年度は、仔稚魚輸送のモデリングに必要な情報を得るため、シログチ仔稚魚や産卵親魚の採集と流れを含む物理・生物環境の測定などフィールド調査に重点を置いた。19年度に得られた研究成果の概要は以下の通りである。(1)仔稚魚の輸送に重要な働きをしている残差流の時間変動特性を解析し、有明海の残差流は仔稚魚輸送に重要な1週間から1か月の時間規模で大きく変動していること、その主な要因は小潮期の密度流の強化と台風等の気象擾乱に伴う吹送流の影響と考えられることを指摘した。超音波ドップラー流速計(ADCP)による測流結果では、通常の密度流のパターンとは異なる南向きの残差流が底層に認められ、またその流速は全体に小さかった。これについては、20年度に引き続き観測を実施しその再現性等を検討する必要がある。(2)シログチ仔稚魚は、有明海奥部(10定点)に6-8月に出現したが、9月以降は全く出現しなかった。最も出現数が多かったのは7月で合計238個体が採集され、8月には採集個体数が著しく減少した。採集された個体の多くはふ化後まもない前屈曲期仔魚であり、主に島原半島付近から諌早湾、奥部の塩田川河口の定点で採集されたことから、シログチ仔稚魚の輸送経路は有明海奥部の西側であることが示唆された。(3)産卵は6-8月(とくに7-8月)に行われており、8月に仔稚魚の出現数が減少したことの原因は仔稚魚の生残率の低下による可能性が高い。今後の検証が必要であるが、8月下旬に諌早湾付近の底層で発達した貧酸素水塊などの影響が注目される。なお、産卵親魚の人工授精とふ化仔魚の飼育により、耳石の日周輪形成がほぼ確認できており、20年度には仔魚の目齢別分布特性の分析を行う予定である。
|