2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19380117
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
尾島 孝男 Hokkaido University, 大学院・水産科学研究院, 教授 (30160865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤辺 智雄 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (30241376)
井上 晶 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (70396307)
田中 啓之 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 助教 (90241372)
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Keywords | アワビ / 多糖分解酵素 / アルギン酸 / ラミナラン / オリゴ糖 / 海藻多糖 / 糖代謝 / 解凍系 |
Research Abstract |
アワビやアメフラシなどの海藻を主食とする水産軟体動物は、アルギン酸やラミナランなどの海藻に特有の多糖をオリゴ糖や単糖(または糖酸)に加水分解した後、炭素源およびエネルギー源として利用していると考えられている。しかしながら、アルギン酸が酵素的に分解されて生じる不飽和ウロン酸やα-ケト酸は、通常の解糖作用(Emden-Meyerhoff経路)では代謝されないため、水産軟体動物がアルギン酸を栄養源として有効に利用しているかどうかについては未だ良く分かっていない。前年度までに申請者らは、エゾアワビの前胃においてアルギン酸は2種類のアルギン酸リアーゼ(エンド型のHdAlyとエキソ型のHdAlex)によって、不飽和のマンヌロン酸2糖と2-keto-3-deoxy-gluconaldehyde(α-ケト酸)に分解され、これらは肝膵臓組織中に取り込まれた後、代謝されることを明らかにした。そこで本年度は、アワビ肝膵臓ホモジェネートからα-ケト酸転換因子を部分精製すると共に、この因子によってα-ケト酸を分解した際に生じる分解産物の性状を解析し、以下の知見を得た。1.肝膵臓由来のα-ケト酸転換因子は、選択分子量14,000の透析膜を通過する程度の大きさをもつ熱や酸に安定な物質であった。2.この因子をα-ケト酸に作用させた際に生じる分解産物は、HPLC,MS,および誘導体化法により、ピルビン酸とグリセルジアルデヒドであることが明らかになった。このことから、α-ケト酸転換因子はアルドラーゼ様の活性をもつ物質であると推定された。3.アルギン酸オリゴ糖を唯一の炭素源とする最小培地を用いた培養試験により、エゾアワビ肝膵臓中には不飽和2糖を分解可能なある種の微生物が存在し、その代謝作用により不飽和オリゴ糖がα-ケト酸に代謝される可能性が考えられた。これら1~3の結果は、アワビの消化液中で生じたアルギン酸オリゴ糖肝膵臓に移行後、最終的に微生物作用によりα-ケト酸に転換されると推定された。
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