2010 Fiscal Year Annual Research Report
自由貿易協定進展下における農業構造再編と環境直接支払い制度の国際比較
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19380127
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加賀爪 優 京都大学, 農学研究科, 教授 (20101248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鬼木 俊次 国際農林水産業研究センター, 国際開発領域, 主任研究員 (60289345)
衣笠 智子 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (70324902)
仙田 徹志 京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (00325325)
沈 金虎 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70258664)
筑井 麻紀子 東京国際大学, 商学部, 教授 (40275798)
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Keywords | 環太平洋戦略的経済連携協定 / 自由貿易協定 / 経済連携協定 / 産業内貿易 / 環境直接支払い制度 / 農業構造再編 / 東アジア共同体構想 / WTO |
Research Abstract |
具体的内容については、シミュレーション分析により、貿易自由化の影響を福祉面(経済余剰)と環境面、生産面(作物単収)の観点から論じた。自由化の影響を主要食料ごとに見ると、米や多くの穀物では途上国の生産が僅かに拡大し、先進国では大きく減少する。小麦・その他作物では、逆に先進国で拡大、途上国で縮小または停滞する。牛・羊肉は先進国では縮小、途上国では拡大するのに対して、豚・鶏肉は先進国で停滞、途上国で縮小する。また、食料価格は先進国では下落、途上国では上昇することになる。 こうした多用な変化が先進国と途上国で相反する方向に作用するものの、そのネットの便益としての経済余剰に集約すると、先進国が貿易利益の大部分を享受することになり、途上国の得る貿易利益は先進国よりも小さくなる。この意味では、スティグリッツ教授が指摘するように、現行のグローバリゼーションは必ずしもゼロサムゲームではなく、ウィンウィンゲーム的な要素もあるが、その利益の配分が公正さを欠いており、途上国の持続可能性を阻害する傾向にあることを解明した点に意義がある。 この研究の重要性は、経済的影響のみならず貿易自由化に伴う環境面への影響も解明したことである。これを経済余剰と窒素バランスの各々への影響の組み合わせで見ると、途上国では多くのシナリオにおいて、経済余剰は若干上昇するものの窒素の過剰蓄積が深刻化するのに対して、先進国では窒素バランスの改善と経済余剰の大幅な増大を享受することになる。このように環境面からの途上国の持続可能性は自由化に伴い脆弱化する傾向が示される。 近年の貿易額は、関税率低下などの自由化で説明される以上の率で急速に拡大している。この自由化の効果を上回る貿易拡大効果の部分を説明するのが、産業内貿易の拡大である。東アジア地域での貿易拡大にとっては、産業内貿易、特にこの工程間分業、つまりフラグメンテーションが重要である。
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Research Products
(23 results)