Research Abstract |
本研究では,窒素・リンを対象に,都市化・混住化が進むアジアモンスーン地域の農業流域における流域水環境統合管理モデルの開発を目指している.平成20年度は排出負荷や閉鎖性水域の水質動態の実態把握に努めるとともに,そのサブモデルの構築を進めた. まず,国内では,福岡市西方の瑞梅寺川流域内の複数の富栄養貯水池を対象に,動植物プランクトンの季節的消長と水域内部の窒素・リンの動態特性の観点から水環境評価を行い,水域に応じた水質改善対策シナリオの策定に係わる水環境工学的知見を得た.また,フミンにより寡少な水中光環境下にある貯水池を対象とした水環境動態解析モデルを構築し,水質の動態特性を明らかにするとともに,水質改善策としての透明度向上の有効性を評価した,次に,中下流域で混住化が進む流域である筑後川流域を対象に,流域水環境統合管理モデルのプロトタイプを開発した.モデル開発に当たり,流域内の細密地理情報を効果的に取得可能なようにGIS(Geographical Information System)を援用した.同モデルの試験運用の結果,洪水イベントに伴う流域内の水や負荷物質(リン・窒素)の動態を時空間的に高解像度で予測可能なことが明らかとなった. また,海外では,ハノイ近郊流域にあるいくつかの農村で,農業における作付け,化学肥料施肥量および地下水の水質に関する調査・解析を行った.地下水のアンモニウム態窒素濃度は各農村で飲用水の水質基準を超え,その濃度には化学肥料施肥量が関わっていること,硝酸態窒素濃度の値は低くかつ農村間で違いがなく,本流域では硝化が起こりにくいこと,アンモニウム態窒素濃度はここ数年モニタリングしてきたその濃度と大差がなく,最近高い濃度を維持していることを明らかにした.さらに,流域水環境に影響を及ぼすと考えられる水田水温の日変化についてモデル化した,対象地域はハノイ農業大学の実験圃場とし,気温,日照時間,湿度およびイネの葉面積指数を入力データとし,水田水温モデルにより,イネの成長に伴う水田水温の低下を再現可能であることが示唆された.
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