Research Abstract |
平成21年度は,ランダムインテグレーションによりGFP遺伝子を導入したES細胞と相同遺伝子組換えによりδクリスタリン遺伝子下流にDsRed遺伝子をノックインしたES細胞から,G0世代とG1世代の遺伝子改変ニワトリの作出研究を行った。また,各種阻害剤の添加によるES細胞培養系の改変を行い,以下の成果を得た。 1) GFP遺伝子を導入したES細胞とDsRed遺伝子をノックインしたES細胞からG0世代のキメラニワトリをそれぞれ10羽および5羽作出し,性成熟後,人工授精によりG1世代の作出実験を行ったが,G1世代の作出はできなかった。 2) 遺伝子改変ES細胞を移植するレシピエント胚をガンマ線照射処理したキメラ胚では,効率良くGFP発現ES細胞が始原生殖細胞に分化し,生殖巣へ移動していることが観察された。 3) 人工授精に使用したキメラニワトリの精子並びに飼育途中に死亡したメスのキメラニワトリの卵巣から抽出したゲノムDNAを用いて,改変遺伝子の検出を行ったところ,精子および卵巣でGFP遺伝子が検出されたことから,遺伝子改変ES細胞が雌雄の両生殖細胞までは分化できていることがわかった。即ち1)でG1世代が得られなかった理由として,効率の低さが考えられ,現在性成熟を迎えようとしているレシピエント胚をガンマ線照射処理したキメラニワトリでのG1世代の誕生が期待された。 4) 各種阻害剤の添加によるES細胞培養系の改変では,MEKのリン酸化阻害剤並びにROCK阻害剤がES細胞の培養系に効果的に機能することがわかった。MEKのリン酸化阻害剤は,ES細胞の多能性維持と増殖に機能し,ROCK阻害剤は低細胞密度からの増殖に有効であることも判明した。 以上のように平成21年度中にG1世代の遺伝子改変ニワトリの誕生はできなかったが,実施したレシピエント胚をガンマ線照射処理やES細胞の培養系の改変により,今後その可能性が十分に期待できる成果を得た。
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