2008 Fiscal Year Annual Research Report
卵細胞を産生する雄マウスの解析から明らかになる新たな生殖生物学
Project/Area Number |
19380162
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
昆 泰寛 Hokkaido University, 大学院・獣医学研究科, 教授 (10178402)
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Keywords | 精巣 / 卵細胞 / マウス / 減数分裂 / Sry / MRL / MpJ / CAGリピート |
Research Abstract |
哺乳類の生殖細胞の性分化は胎子期に雌性生殖細胞が減数分裂に移行し、雄性生殖細胞が有糸分裂のG0/G1期に停止することによって起こり、その結果、雌では卵のみが、雄では精子のみが産生される。キメラ動物や遺伝的障害に起因する卵精巣や半陰陽を除き、哺乳類の雄が卵細胞を産生するという事実は報告がない。しかし、MRL/MpJマウスの精子形成過程を詳細に観察すると、生後問もない個体の精巣精細管内において卵細胞が存在する。本研究の目的は、精巣内卵細胞の出現要因を解明し、卵細胞としての性質及び機能を検証することである。今年度は、MRL/MpJ胎子精巣における減数分裂の開始、及び卵細胞特異的遺伝子の発現を調べた。精巣内卵細胞の有無をC57BL/6、BALB/c、C3H/He、DBA/2、A/J、AKR/Nの近交系マウス及びMRL/MpJとC57BL/6間のF1を用いて検証した。 MRL/MpJマウスの胎子精巣では本来抑制されているはずの減数分裂の開始及び進行が認められ、卵細胞の分化に重要な転写因子であるFiglaの発現が検出された。精巣内卵細胞はMRL/MpJ、AKR/N、B6MRLF1で検出され、AKR/NとB6MRLF1における出現頻度はMRL/MpJに比べて低かった。このことは、精巣内卵細胞出現の責任遺伝子の1つはY染色体上にあるが、常染色体上にも存在する可能性を示す。MRL/MpJとAKR/NのSeyでは性決定に重要とされるCAGリピート領域の一部に短縮が認められた。このことと、MRL/MpJの構成ゲノムの約13%がAKR/Nに由来することから、精巣内卵細胞出現の表現型はAKR/N由来のSryと強い関連性を有することが示唆された。 次年度は、引き続き、卵細胞としての機能の検証、及び卵細胞出現の他責任遺伝子の同定を行っていく予定である。
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