2007 Fiscal Year Annual Research Report
間葉系幹細胞の分化制御を介した成長ホルモンによる生体恒常性維持機能の解明
Project/Area Number |
19380167
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山内 啓太郎 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (70272440)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 智 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (90242164)
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Keywords | 成長ホルモン / 間葉系幹細胞 / 脂肪細胞 / 筋衛星細胞 / 分化 |
Research Abstract |
本課題は、骨格筋内や骨髄内に存在する間葉系幹細胞の分化が成長ホルモン(GH)によりどのような機構で制御されているかを明らかにすることを目指したものである。本年度は以下の研究成果を得た。 (1)本課題遂行のうえで中心となるヒト成長ホルモン遺伝子導入ラット(hGH-Tg)の骨格筋や骨の表現型について、正常ラットとの比較を行った。その結果、hGH-Tgでは正常ラットに比較し、骨格筋量や骨量が著しく減少していることが判明した。また、同時に、骨格筋や骨髄内に存在する間葉系幹細胞の分化能か両ラット間で異なっていることを示唆する知見を得た。 (2)骨格筋間葉系幹細胞である筋衛星細胞の分化能が隣接する筋線維の状態により大きく変化すること、すなわち筋線維が萎縮・変性した際には筋衛星細胞は筋細胞には分化せず、脂肪細胞へと分化することを明らかにした。また、細胞間情報伝達を担うコネキシンの阻害によって、筋衛星細胞の脂肪分化能が高まることも判明した。 (3)中型実験動物であるシバヤギの筋衛星細胞培養系を確立し、これまで小型実験動物で得られた知見が敷衍できることを示した。 加齢によりGHの分泌が低下し、その際、骨格筋の萎縮や骨格筋内脂肪蓄積が生じることが知られているが、本研究成果はGHの分泌低下が骨格筋の萎縮を引き起こし、それにより筋衛星細胞が脂肪分化能を獲得し、その結果、骨格筋内脂肪蓄積が生じるという一連の機序の存在を反映するものと考えられた。また、コネキシンの発現が加齢により低下する例が知られているが、GH分泌低下がコネキシン分子の発現低下を招き、それにより筋衛星細胞の脂肪分化能が高まる可能性が考えられた。
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