2009 Fiscal Year Annual Research Report
間葉系幹細胞の分化制御を介した成長ホルモンによる生体恒常性維持機能の解明
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19380167
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山内 啓太郎 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (70272440)
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Keywords | 成長ホルモン / 間葉系幹細胞 / 脂肪細胞 / 筋衛星細胞 / 骨芽細胞 / 骨髄 / 分化 / 骨 |
Research Abstract |
本課題は、骨格筋内や骨髄内に存在する間葉系幹細胞の分化が成長ホルモン(GH)により制御される機序を、ヒト成長ホルモン遺伝子導入ラット(hGH-Tg)をモデル動物として用いることにより明らかにすることを目指したものである。本年度は以下の研究成果を得た。 前年度にhGH-Tgの骨に存在する間葉系幹細胞の骨分化能は野生型ラットのものに比べ低下していること、また、その一方で脂肪分化能は高進していることを見出し、これがhGH-Tgの骨量低下や骨髄内脂肪細胞数の増加をもたらしている可能性を示した。そこで本年度は、hGH-Tg間葉系幹細胞の骨分化能低下の要因について細胞レベルでの詳細な解析を行った。その結果、hGH-Tg間葉系幹細胞では、野生型ラット間葉系幹細胞に比べ、生体内での主要な骨分化促進因子であるBMP-2に対する反応性が著しく低下していることを見出した。また、この反応性の低下は細胞内におけるBMP-2シグナルの下流因子であるSmad1/5/8のリン酸化の低下によるものであることが判明した。 一方、hGH-Tg間葉系幹細胞の分化能が、外生的なGHの投与により野生型ラットのものに近づくか否かについて検討を行った結果、脂肪分化能については野生型ラットと同程度にまで低下したものの、骨分化能については回復がみられなかった。このことから、GHの低下によりひとたび生じた間葉系幹細胞の骨分化能低下は不可逆的なものであることがわかった。この点に関しては、今後、加齢に伴うGHの低下が間葉系幹細胞にエピジェネティックな変化を生じるという仮説を立て、検証していく予定である。 本研究で得られた成果は、これまでいわゆるホルモンとして位置づけられてきたGHが間葉系幹細胞の分化制御因子としての作用をもつことを示すもので、加齢に伴う種々の幹細胞の機能低下のメカニズムの一端を明らかにしたものと評価される。
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