2008 Fiscal Year Annual Research Report
ドーモイ酸による記憶毒性および神経変性のメカニズム解明
Project/Area Number |
19380174
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
種村 健太郎 National Institute of Health Sciences, 毒性部, 主任研究官 (20332322)
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Keywords | ドーモイ酸 / 記憶毒性 / 神経変性 / 網羅的遺伝子解析 / マウス / グルタミン酸受容体 / 遅発性毒性発現 / 軸索 |
Research Abstract |
グルタミン酸受容体のアゴニストであるドーモイ酸を成体マウスに腹腔投与(0.1、0.3、1.0mg/kg体重)した結果、海馬依存性が高いとされる空間連想記憶障害が生じることを条件付け学習試験にて明らかにした。さらにドーモイ酸高用量投与(1.0mg/kg体重)群において、さらに投与の週には記憶異常が認められなかったが、2週間後に扁桃体依存性が高いとされる音連想記憶異常が生じることを突き止めた。そこで、記憶異常の分子メカニズム解明を目的として網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、ドーモイ酸投与5日後のマウス海馬において、多くのキナーゼ群の遺伝子発現誘導が示された(平成19年度に遂行)。そこで、こうしたキナーゼ群による軸索タンパクへの生化学的性状への影響を検討する目的で、軸索タンパクのタウプロテインに着目し、ドーモイ酸投与から1、2、及び3週間後の海馬における、(1)タウタンパクのリン酸化及び(2)タウタンパクの界面活性剤への溶解性に焦点を合わせて解析した。その結果、タウタンパクの一部のリン酸化部位のリン酸化異常とともに、界面活性剤への溶解性に異常が認められた。以上の結果から、ドーモイ酸投与によるグルタミン酸受容体シグナルかく乱の結果、遅発的に軸索機能影響が生じることをタンパクレベルで示すことに成功した。一方で、前シナプス及び後シナプスのマーカータンパクの発現量には異常を認めなかった。以上の結果から、ドーモイ酸による記憶異常メカニズムは、シナプス異常ではなく軸索機能不全によるものと推測された。
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