2009 Fiscal Year Annual Research Report
植物におけるHis型結合ペプチドの検索と化学生物学的機能の解明
Project/Area Number |
19380182
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
原 正和 Shizuoka University, 農学部, 教授 (10293614)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河岸 洋和 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (70183283)
矢永 誠人 静岡大学, 理学部, 准教授 (10246449)
|
Keywords | 金属結合 / ヒスチジン / デハイドリン / His型金属結合ペプチド / 植物 / シロイヌナズナ |
Research Abstract |
本年度は、シロイヌナズナのゲノムに存在するHis型金属結合ペプチドとして、AtHIRD1(Arabidopsis thaliana histidine-rich dehydrin 1)の金属結合特性及び生理学的な役割について集中的に調査した。AtHIRD1は、ウンシュウミカンHis型金属結合デハイドリンのシロイヌナズナオーソログてある。シロイヌナズナデハイドリン10遺伝子の中で最も小さく(98アミノ酸)、最もヒスチジン含量の高い(13%)デハイドリンである。本遺伝子の発現を調査したところ、通常のデハイドリンとは異なり、水ストレス等による発現の変動はみられなかった。また、植物体内における存在部位の確認のため、器官別発現調査、組織免疫顕微鏡観察、免疫蛍光顕微鏡観察、GFP-AtHIRD1細胞内局在観察、細胞小器官分画試験を行ったところ、AtHIRD1は、通導組織が発達した器官に多く存在し、花茎では、形成層に局在した。また、葉緑体、ミトコンドリア、ペルオキシソームとは異なる、より比重の軽い未同定の細胞内器官に結合状態で存在し、その可溶化には、SDSや高濃度の塩化ナトリウムが必要であることが判明した。オニオン細胞内では、核と細胞質での存在が確認できた。次に、シロイヌナズナから、4ステップでAtHIRD1を精製することに成功し、LC-MS/MSによってAtHIRD1であることが同定された。翻訳後修飾として、リン酸化が認められた。大腸菌発現系によってAtHIRD1を生産し、金属結合特性を調査したところ、Cu、Ni、Co、Znと結合したが、Ca、Mg、Cdとは結合しなかった。また、結合する金属に対しては、すべて2相性の結合を示し、Znに対して最も高い親和性を示した。ウンシュウミカンHis型デハイドリンとの、ドメイン配列-金属結合活性相関解析から、金属の結合には、ダブルヒコスチジン、H-X3-Hモチーフが重要な役割を担う可能性が示唆された。以上の結果、ヒスチジンに富むデハイドリンは、通常のデハイドリンとは異なる特性を有し、その金属親和性から、細胞分裂やストレス応答において金属マネジメント機能を有することが示唆された。
|
Research Products
(2 results)