2010 Fiscal Year Annual Research Report
植物におけるHis型結合ペプチドの検索と化学生物学的機能の解明
Project/Area Number |
19380182
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
原 正和 静岡大学, 農学部, 教授 (10293614)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河岸 洋和 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (70183283)
矢永 誠人 静岡大学, 理学部, 准教授 (10246449)
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Keywords | 金属結合 / ヒスチジン / デハイドリン / His型金属結合ペプチド / 植物 / シロイヌナズナ |
Research Abstract |
本年度は、最終年度として、全ての結果を総括することに集中した。今回の研究で申請者が提唱した「His型結合ペプチド」のデータベース化に成功し、その一部は、本年発表の学術論文で公開した。また、各種ソフトウェアによる調査で、His含有率の高いペプチドの多くが、特定の構造を取らない、いわゆる天然変性タンパク質である可能性が示唆された。一方、昨年度報告した、シロイヌナズナの主要なHis型結合ペプチドAtHIRD11(昨年度報告当時ではAtHIRD1と呼んでいた)について、大腸菌で発現させたタンパク質の二次構造を調査した。本タンパク質は、それ自身では、ほぼ完全なランダム状態にあるが、金属、特にAtHIRD11と結合する金属種(Cu、Ni、Co、Zn)を作用させると、ランダム状態が解消する事が判明した。この時、モルテングロブル状態よりも緩んだ特殊な状態で、会合・凝集する事を、各種蛍光試験によって見出だした。さらに、この状態では、AtHIRD11は極めて高いプロテアーゼ耐性を示した。こうした金属存在下でのAtHIRD11の挙動は、昨年度報告した、シロイヌナズナ植物体におけるAtHIRD11の存在様態とよく一致した。以上の事を総合すると、植物のHis型結合ペプチドの多くは、元来ひらひらした天然変性タンパク質であるが、生体内では、金属と結合し、より固い立体構造をとり、恐らくは、特定の機能を発揮していると推察された。その機能は、今後の解明を待たねばならない。しかし、AtHIRD11においては、われわれが作出した過剰発現株が、幼植物期では成長が順調だが、次第に老化が進む傾向にある、という、ごく最近のデータがある。これは、AtHIRD11が、植物の成長や分化に何らかの影響を与えていることを示している。将来、His型結合ペプチドは、植物の育成を制御する重要なツールとして利用できるものと期待される。
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Research Products
(8 results)