Research Abstract |
有機スズ汚染はまだ続くと予想されることから,生態系の有機スズ汚染許容レベルを知ることは生態毒性リスク評価に必要な情報である.環境微生物は化学汚染に対して耐性・分解機能を発揮して環境の自浄緩衝作用を果たす.本研究では,海洋由来の有機スズ耐性菌の中で特にトリブチルスズ(TBT)耐性菌の耐性メカニズムを生化学的に解明すると同時に,耐性誘導機構を明らかにする.また,TBT暴露で発現が変化する遺伝子を探索・クローニングし,バイオセンサーとして環境中のTBT汚染測定系への利用を試みることを目的とする. 平成20年度の目標はTBT耐性遺伝子の機能特定と有機スズ存在下での発現調節の解明であった.まずTBT耐性菌Pseudoalteromonas sp.M-1のSecAについては,TBT存在下での発現調節を検討した,その結果,高濃度のTBT暴露によって発現が上昇し,Cdでは変化しなかったことから,発現はTBT特異的である可能性が示唆された. Pseudomonas aeruginosa25Wでは,ATP依存型ポリアミントランスポーター遺伝子が特定された.本遺伝子の機能を検討したが,耐性を付与する機構はまだ解明に至っていない. 一方,Aeromonasa molluscorum Av27からは多剤耐性遺伝子sugEに類似した遺伝子がTBT耐性遺伝子としてクローニングされた.この株は抗生物質耐性ではないことから,TBT耐性機構への関与に興味が持たれる.また,sugEは近縁のAeromonasでは検出されないことから,A. molluscorumに特異的な遺伝子かもしれない.現在,sugEの詳細な解析が進んでおり,環境中での遺伝子量,発現量について明らかになりつつある.本遺伝子はバイオモニタリングの候補となる可能性がある.
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