2008 Fiscal Year Annual Research Report
FGFシグナルの組織形成における役割とその分子メカニズムの解明
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19390021
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 信行 Kyoto University, 薬学研究科, 教授 (10110610)
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Keywords | Fgf / Fgf16 / 心臓 / 細胞増殖 / 遺伝子欠損マウス / 心筋細胞 |
Research Abstract |
生体におけるFgf16の機能を明らかにするため、Fgf16遺伝子欠損マウス(Fgf16 KOマウス)を作製し、これについて詳細な解析を行った。Fgf16 KOマウスは正常なメンデル率に従って出生し、野生型と外見上に大きな差は認められなかった。生後6ヶ月齢マウスの各臓器重量を測定した結果、心臓重量のみ野生型に比べFgf16 KOマウスで有意に減少していた。また心臓の形態観察を行った結果、野生型に比べFgf16 KOマウスで縮小傾向が見られた。次に、心臓の縮小原因を検討するため心筋細胞面積と心筋細胞数を測定した結果、前者に差は見られなかったが、後者は野生型に比べFgf16 KOマウスで有意に減少していた。以上より、Fgf16の欠損により心筋細胞数が減少し心臓に縮小傾向が見られることが示唆された。次に、Fgf16の心機能への影響を生後6ヶ月齢マウスについて検討した。野生型に比べFgf16 KOマウスで左室拡張期径がわずかに短縮していたものの、脈拍や血圧、短縮率や駆出率などの心機能パラメータはほぼ正常であった。胎生期の心臓形成過程において胎生7.5日齢に心臓原基が形成される。心筋細胞の増殖は胎生11.5日齢に緩やかなピークを迎え、その後徐々に減少し始め生後まもなく停止する。従って成体での心筋細胞数は胎生期の心筋細胞増殖により制御されると言える。Fgf16 KOマウスにおける心筋細胞数の減少原因を検討するため、胎生期の心筋細胞の増殖活性を検討した。胎生14.5日齢では、野生型に比べFgf16 KOマウスで有意に低下し、胎生16.5,18.5日齢でもやや低下傾向を示した。Fgfは多くの細胞の分化にも重要な役割を果たす。そこで生後6ヶ月齢マウスの心臓における心臓特異的因子の発現を検討した。生後6ヶ月齢ではBNPの発現が野生型に比べFgf16 KOマウスで有意に低下した。以上の結果より、Fgf16は胎生14.5日齢から心室の心筋細胞に発現し、胎生期の心筋細胞増殖を促進し、成体においてはBNPの発現を促進することが示唆された。
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Research Products
(2 results)