2008 Fiscal Year Annual Research Report
薬物胎盤移行と作用のPK・PD評価に基づく胎児毒性予測システムの構築
Project/Area Number |
19390040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤田 康文 The University of Tokyo, 大学院・情報学環, 教授 (80114502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 壽一 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 准教授 (70262029)
堀 里子 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 講師 (70313145)
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Keywords | 薬物胎児移行 / 胎児毒性 / 胎盤 / 薬物輸送担体 |
Research Abstract |
非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID8)は、シクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害を介してプロスタグランジンの生合成を抑制するため、妊娠末期に投与された場合、胎児動脈管の閉鎖や新生児における肺高血圧持続症などの胎児毒性をきたすことがある。しかし、ヒトにおける NSAIDs の胎児移行性を考慮して、その胎児毒性を予測する試みは行われていない。我々は昨年度、ヒト胎盤灌流実験の結果に新規薬物動態モデルを適用することで、母親-胎盤間、胎盤-胎児間の移行パラメータ(TP-PKパラメータ)を算出できることを報告した。本年度は、NSAIDsのTP-PKパラメータをもとに、その胎児毒性を予測評価することを目的とした。ヒト胎盤灌流法により算出したTP-PKパラメータを用いて、妊婦に常用量の3種のNSAIDs(antipyrine、salicylic acid、diclofenac)を投与した際のヒト胎児血中濃度推移を推定した。また、妊娠ラットにNSAIDsを投与後の胎仔動脈管収縮作用の用量依存性と妊娠ラットにおける薬物の体内動態特性の文献報告から、NSAIDsによる胎仔動脈管収縮作用に関する血漿中濃度一作用関係(PDパラメータ)を求めた。このPDパラメータと上述のヒト胎児血中濃度推移から、ヒトにおいて母親が常用量のNSAIDsを経口服用後の胎児動脈管収縮作用の経時推移を予測した。各NSAIDsをヒトに投与後の薬物体内動態と、胎盤灌流実験より求まったTP-PKパラメータをもとに、ヒト胎児血漿中NSAID濃度推移を予測できた!さらに、既報の文献の遡及的解析により、NSAIDs の動脈管収縮作用の血漿中濃度一作用関係を推定できた。以上の結果をもとに、妊娠末期の妊婦にNSAIDsを投与した場合の、各薬物の胎児毒性のプロファイルを予測できた。その結果、antipyrine及びsalicylic acidの平均動脈管収縮率は、それぞれ6.29%及び5.63%と求まり、妊婦が常用量摂取してもほとんど動脈管収縮を引き起こさないと推定された。一方、diclofenac の平均動脈管収縮率は39。4%と推算され、妊婦が常用量摂取した場合、胎児において動脈管収縮を引きおこす可能性がsalicylic acidやantipyrineに比べ高いと予測された。
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Research Products
(2 results)