2007 Fiscal Year Annual Research Report
筋変性疾患におけるトランスポータ・チャネルの病態的意義の解明と治療への応用
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19390080
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
若林 繁夫 National Cardiovascular Center Research Institute, 循環分子生理部, 部長 (70158583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 裕子 国立循環器病センター研究所, 循環分子生理部, 室長 (80171908)
西谷 友重 国立循環器病センター研究所, 循環分子生理部, 室長 (50393244)
久光 隆 国立循環器病センター研究所, 循環分子生理部, 室員 (50327946)
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Keywords | 循環器・高血圧 / 生体分子 / 蛋白質 / トランスレーショナルリサーチ / バイオテクノロジー |
Research Abstract |
平成19年度は筋ジストロフィー症におけるNa^<+>/H^<+>交換輸送体NHEの病態的役割を検討した。ジストロフィン欠損で筋ジスを発症するマウス(mdx)またはサルコグリカン欠損で筋ジスと心筋症を発症するハムスター(BI014.6)において、NHEの阻害剤が筋変性の病態を改善することを見出した(Am.J .Pathology, 2007)。筋ジス動物から調製した筋細胞を用いて、NHE阻害剤の筋変性保護メカニズムを検討した。筋細胞への全Na+取り込みの大部分(65%以上)がNHEの特異的阻害剤で抑制されたことにより筋細胞におけるNa+流入にNHEの寄与が大きいこと、そしてNHEを介する流入が筋ジス筋細胞で上昇していることが判明した。また筋ジス筋細胞では、コントロールに比べて[Na+]i上昇、pHiの上昇、NHE活性のpHi依存性のアルカリ側へのシフトも観察されたことにより、NHE活性が有意に上昇していることが判明した。筋ジス筋細胞では外液Ca^<2+>濃度を上げるとコントロールでは観察されないCa^<2+>流入の上昇が認められるが、この上昇はカリポライドであらかじめ処理することにより抑制され、また同じ処理により伸展刺激による筋ジス筋細胞からのCK漏出も抑制された。これらの結果から、筋変性に導く細胞内Ca^<2+>濃度上昇にNHEの恒常的な活性化が大きく寄与することがわかった。他方、筋ジスの骨格筋からは機械的なストレスによってATPが過剰に流出し、さらにストレッチ刺激によってATP遊離が促進された。ATP受容体(P2)のアンタゴニスト、スラミンはNHE活性を抑えるとともに筋ジスの病態を改善した。これらの結果から、筋ジス骨格筋における過剰な機械刺激がATP遊離→P2リセプター活性化→NHE活性化→細胞内Na^<+>濃度上昇→NCX活性変化→細胞内Ca^<2+>濃度上昇というカスケードを駆動し、筋変性に導くと考えられる。NHE阻害剤の病態改善効果は、筋ジスの骨格筋で起こるイオン代謝異常の一断面を浮上させるとともに新しい治療戦略を考える重要なステップになると思われる。
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Research Products
(7 results)